明日の黒板

第1話

 ロックはがんじがらめの世間へ反抗するための、反骨精神からきたものであると誰かは言った。


 ジョンレノンはimaginで戦争の悲惨さと平和への祈りを歌い、ラモーンズやセックスピストルズは社会への反逆心を露骨に歌い、ビートクルセイダーズはテムジン川で南北問題の平和解決を謳った。


 だが、ジョンレノンは戦争推進派により殺され、ラモーンズ達は酒とドラッグに溺れて憤りのない世の中を呪いながら死に、ビートクルセイダーズは発禁処分となった。


 ここに、ある少年がいる。


 その少年は、ロックで世の中を変えてやるという反骨精神、というよりも、貧困のなかから這い上がるという決意で、バイト代で貯めた金でギターを買い、同じ境遇の仲間達と共に同じ思いで勉強そっちのけで音楽活動を高校三年間で行ってきている。


 高校最後の夏休みを控えた時のことだ……


 金髪の男子高校生と、清楚な女子高生という凸凹な組み合わせのカップルがジュースを片手に街を歩いている。


「俺、ロックでメシを食うわ」


 醍醐夏男は、烏丸春子との帰宅途中に不意にそう言う。


 春子はその一言で、飲んでいたペットボトルのお茶を軽く吹き出した。


「え? ロックったって……無理じゃね?」


「いや、三者面談で音大に行く事を話してある、先生や親は呆れてたが、俺は音大に行く。……お前も政治家は無理だろ?」


「まぁ、そりゃあ、ね……でも親が大学に行けって言ってるしねぇ。大卒のブランドは必要だしね」


 春子にも壮大な夢があり、政治家になりベーシックインカムを導入するという夢がある。


「まぁ、夏休みがあるしねぇ、お互い頑張ろうか」


「うん、そうね……」


 春子は複雑な表情を浮かべて、空になったペットボトルをゴミ箱に捨てる。


(ごめんね、夏男、私は多分……)


「どうしたん? なんか浮かない顔をして。なんか最近お前ちょっとおかしいぞ?」


「え? いや、何でもないよ」


「そっか、帰ろうか」


彼等は家路へとついていった。


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