治水(3)

「ちょっと待ってて、今、融かすから……」

 桜姉さんの足は氷漬けになっていた。

 どうやら……「もう1人の巫女」が桜さんを足止めする為にやったらしい。

「それはいいけど……私の足、大丈夫なのか? そろそろ感覚がなくなってきたんだけど」

『まだ、一応、血は流れてるけど……よく判んない』

 瑠璃ちゃんより、あまり役に立たない助言。

「こっちの医療チームで凍傷の手当が可能か確認しておく」

 伯父さんが大真面目にそう答える。

「医療チーム? そっちには、そんなのまで居るの?」

「知らなかったのか?」

「何で、違法な『正義の味方』の方が、警察よりも組織がしっかりしてんだ?」

 対異能力犯罪広域警察レコンキスタと「御当地ヒーロー」の間での異文化ギャップが、早速、表面化し始めていた。

「で……あいつは……えっと……何て呼べば良いんだ? そっちの慣習では……」

「なるべく本名は使わないでくれ……『新人』でいい」

「あんな場慣れしまくった新人が居てたまるか‼」

「中々、将来有望そうな弟子を育てたもんだな……おい」

 熊本方面から来た応援の片方……背が高い方の人が、伯父さんにそう言った。

「生身で『国防戦機』に立ち向かうつもりみたいだが……」

「えっ?」

「もう1台、こっちに向かってる」

 今度は熊本から来た応援の横幅が広い人。

「そ……そんな……どうすんだよ……?」

「いや、ここに居るメンバーなら、何とでもなる」

 えっ?

 あっ……そう言えば……お昼ご飯の時に来た災害情報通知……よくよく考えたら……とんでもない事が書いてあった。

 4m級の軍用パワーローダー2台が……生身の人間(なのか?)と戦って……逆に逃げ出した、とも読めない事もない内容だった……。

「とりあえず、もう1台の『国防戦機』は俺達2人で何とかする」

 熊本から来た2人の背の高い方の人がそう言った途端……。

『どうなってんの? あんたらの話聞いてると、何か、他に厄介なのが居るっぽいのに、どうして、ウチの馬鹿姉と……あんたの姉貴が喧嘩してんだよ?』

 頭の中で瑠璃ちゃんの声がする。

「変だぞ……。もう1人の水神の巫女が力を使っている」

 続いて、鳥栖方面から来た小柄な女の人がそう言った。

 どうやら……「神の力」ってヤツを持ってる人は……同類が力を使うと、それを検知出来るらしい。

「マズいな……行くぞ……」

 その時、轟音が響いた。

 最初は……爆発音……。

 続いて……大きくて重い何かが落ちて来て地面に激突する音。

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