瀾(一三)
『マズい……近付いて来てる……』
『誰が……? おい……まさか……?』
『佐伯だ』
気絶させた後、縛り付けて放置していたが……N鉄で久留米に入ったヤツの部下に救助されたらしい。
「おい……何で……お前らのアレが退却してんだ?」
レンジャー隊の
「マズい事になった……。ヤツが……あの化物が……こっちに来てる」
こちらの
「後方支援チーム……『国防戦機』の遠隔操作用のアンテナはどこだ?」
私は無線通信でそう聞いた。
『ええっと……バックパックの上部の左右に1つづつ。片方は予備なんで、両方ブッ壊さないと……って何するつもりだ?』
「ちょっと貸して下さい」
私は、横に居たレンジャー隊の
「お……おい……何する気だ?」
「仲間が退却する隙を作りたいんです」
「ふざけ……」
その時、流れ弾が駅構内にも入って来た。
「おい……どうやって止める気だ?」
「方法は1つだけ……。これで『国防戦機』の背面を撃つ」
「いや……相手は軍用パワーローダーだぞ。これでも、あれの装甲を貫通するのは無理……」
「あれは遠隔操作されてます。通信用のアンテナを破壊すれば止まる筈です。場所はバックパック上部に2つ」
「場所は?」
「だから、これで弾をバラ撒けば……どれかはアンテナに当たる筈です」
「お……おい……大雑把な……だが……それしか手が無いなら……私がやる」
「ですが……」
「お前、子供だろ。子供に危険な真似なんか……」
「了解……」
桜さんはガトリング砲を持ったまま駆け出した。
「お……おい……。止まれ……死ぬ気か?」
レンジャー隊の
「不自惜身命……」
私は……そう唱えた。
いわゆる「火事場の馬鹿力」を出す自己暗示をかける為のキーワードだ。そして……。
顔面装甲の内側のヘッドマウントディスプレイに「リミッター解除キーワード確認」と云う文字が表示される。
装甲の各部が開いて排熱が始まる。
「お……おい……小僧っ‼」
おっちゃんの絶叫。
『おい……お前、いつの間に制御AIの設定を変えやがったっ⁈』
続いて、無線ごしに、苹采姉さんの怒号。
勿論、制御AIの設定を確認した時に隙を見て、リミッター解除機能を有効にしていた。
今から無効にしても、設定変更は制御AIを再起動しないと有効にならない。
そして……苹采姉さんが私を殺す気でも無い限り……この状況で制御AIの再起動など出来る筈が無い。
「火事場の馬鹿力」と鎧のリミッター解除で……おそらくは……パワー・スピードとも、通常のおよそ倍……。
「おい……っ‼」
桜さんの横を通り過ぎる。
「私が囮になる……。その間に……」
さて……私の体が……何分持つか?
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