治水(4)
「ねぇ、モニタにアイコンが表示されたんだけど……アイコンの上の方の赤い『Direct』って文字、何?」
あたしは瀾ちゃんに聞いた。
「個別通信だ。普通の音声通信は他の仲間にも届くが、これは特定の誰かにだけしか聞こえない。で、工具を組合せたようなアイコンか?」
「うん」
「私のにも表示されてる。『工房』のアイコンだ。多分、苹采姉さんだ」
しかし、聞こえてきた声の主は予想も出来なかった人。
『おい、高木‼ レンジャー隊の黄色い人って、お前と治水さんの知り合いか何かだったよな?』
「待て、何で、お前が……」
「望月君⁉」
『その人が危ない‼ JR久留米駅東口あたりだ‼』
そんな……桜姉さんが……。
「えっと……じゃあ……引き返すの?」
「とりあえず、ドローンの映像が撮れてたら送れ‼ 制御AI、送られた映像をチタニウムタイガーのモニタに表示」
瀾ちゃんは、あたし達が載ってる4輪バギーのを一端停止させる。続いて、前の座席のモニタに映像が表示された。
「な……なに……これ?……河童と違う」
青っぽい肌に赤い髪の人間(?)の集団、そして、さっき見た白くて大きな河童(?)に囲まれてるレンジャー隊。そしてレンジャー隊を取り囲んでいる集団の後には……銀色の大きな狼男……。
「
『どう云う事?』
瀾ちゃんが通話を始めると同時に、モニタには般若の面のアイコンが表示される。
「JR久留米駅東口に……『青鬼』の一族の
『……判った』
通話は一端終了。
「危険だが……引き返していいか?」
「うん……だけど……イマイチ話が見えないんだけど……」
「さっきの通話の相手は……私の……と言うか私と治水の伯父さんの弟子。正確には、さっきの人と、さっきの人の亡くなった旦那さんがね」
「えっ?」
「さっきの人とその旦那さんは……青い肌と赤い髪の『鬼』の姿に変身して、電撃を操る能力を持つ一族の人間だ」
『ああ、あの一族か……。大昔、あたしの巫女に従ってた連中と千年以上に渡って喧嘩してた奴ら』
横から瑠璃ちゃんが口を出す。
「そして、さっきの人の旦那さんは5年前に何者かに殺され……聞いて楽しい話じゃないが、バラバラ死体にされて、その死体の半分以上は行方不明。そして、さっきの人の娘も行方不明。多分、旦那さんを殺した何者かに連れ去られた」
「じゃあ……その……さっきの映像の中の……あれは?」
「だから、その殺された旦那さんか、連れ去られた娘の能力を普通の人間に移植して作られた者達だ」
「他の人に任せるってのは……?」
「個人的な事だけど……私にとって、あの人の娘は……妹みたいなモノだった。もし、まだ、生きてるなら……探し出す手助けがしたい」
「じゃ、戻ろうか」
「自分で言い出して何だけど……危険だぞ」
「あたしの『お姉ちゃん』の『妹』なら、あたしの『妹』も同じだよ」
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