治水(6)
「あの……これ、何ですか?」
瀾ちゃんは、まず、そう聞いた。
あたしと瀾ちゃんと望月君は、小柄なおじさん(多分)に言われたトラックに辿り着いた。その、大型トラックのコンテナの中は部屋になっており、2人の人が居た。女の人が1人に、男の人が1人。
そして、その中に有ったのは……。
「今日、納品の予定でね……。あくまで偶然だ、偶然」
女の人は、そう答えた。どっか気まずそうな感じだ。
「何の冗談ですか? 今日、起きる事を予想でもしてたんですか?」
「そんな訳無いに決ってるよ‼」
「で……これ……何なの?」
あたしは銀色の
「対神鬼動外殻『護国軍鬼・4号鬼』……常人が『神』と戦う為に作られた『鎧』だ……」
「えっ? まさか……これを使えば、あの人と……」
「勝てるとまでは言えない……。少なくとも即死しない場合も有る。『神の力』でも、物理的なモノまでは無理だが……直接、着装者の心身に影響を与えるタイプの攻撃は無効化する事が出来る……。しかも……こいつは……私が着装する事を前提に調整されている」
「おい、あくまで、新型の人工筋肉と制御AIの実験の為だぞ」
「実験って何? まさか、マズい事?」
「あの……高木は……その……まだ子供ですよね……」
流石に望月君もツッコミを入れる。
「判ってるよ……。しかし……とんでもない悪魔の囁きを、私達の耳元でささやいたヤツが居た……。瀾の父親だ……」
「えっ?」
「この『鎧』の制御AIは……着装者の動きを学習していく……。そして、着装者の構えや予備動作や筋電位や周囲の状況から、着装者の次の動きを予測するようになる。使えば使うほど、なめらで自然な動きが出来るようになり、着装者の動きと鎧の動きのタイムラグは0に近付いていく」
瀾ちゃんは、そう説明した。
「で、瀾の父親は、私達にこう聞いた訳だ。『これまでは、AIが着装者の動きを学習するだけだった。ところで、着装者の技量と制御AIの学習データが共に成長・進歩していった場合はどうなる? ちょうど、ここに、まだこれから戦闘術の技量が上達していくであろうヤツが居るぞ』ってな」
「……まさか……」
「どうなるか試してみたい、って誘惑に勝てなかった……」
「とりあえず、
「おい……待て」
「万が一の場合だよ。あくまで万が一の……」
「あと、瀾ちゃん……『姉さん』って?」
「この人は、私達の
「……ついでに……この『鎧』の設計者でもある」
「あと、空いてるモニタにドローンが撮影してる現場の様子を映して……嘘だろ……」
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