金苔

金苔(かなこけ)

緑青。

銅が永き季を静かに繰り返し過ごして得たその色合いは、あるいは清々しく、あるいは神秘的で、森の背景色を彩る苔のよう。


・歴史的建造物

 お城、お寺、神社、長い歴史を遺ってきた建造物の金属部分は緑青が浮いているものも多いです。しかし、それは劣化ではなく、年月を経て培われた美でもありましょう。


・人の気配が離れた場所

 苔は、人が歩くのを止めて踏まれなくなった道に良く繁茂します。金苔も、人の手入れがなくなって現れることも多いです。

 昔は人に利用されていても、今は人が住まず足が離れてしまった場所を、金苔はひっそりと護っています。


・遷移

 環境が次のステージへ変わることを生態学では、遷移と呼びます。金苔は銅の姿を変えて景観を変えていく、つまり遷移の結果とも言えるのです。


・武将

 お城、古い鎧、武器、それらが発掘される時には金苔や錆に埋もれていることも多いです。金苔はかつての武将の記憶が朽ち果てていく中で、その遺品を覆います。或いは、武将の魂を包み護るように。


・寂れる

 金苔は錆であり、人の寂れたところに潜みます。金苔は人に相手をされなくなった物に、人に磨かれなくなった物に浮くものですから。

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