硝子水

硝子水(がらすみづ)〔がらすみず〕

炭酸水、特にラムネやサイダーのこと。

喉に硝子が突き刺さるような痛みがあって刺激的ですね。


・ラムネ、サイダー

 つまりは、透明な炭酸水です。硝子とはやはり、透明であることが一つの本質であります。色のついた炭酸水も、色硝子のように硝子水の一つと言えるでしょうが、何よりもまずは透明で色をつけずに向こうを覗かせるラムネやサイダーが硝子水を代表するのに相応しいのです。


・硝子の混じった水

 硝子水の炭酸の刺激、痛みは、硝子の溶けた水ではなくて、硝子が混じった水に近いです。

 硝子が溶けて完全に液体になっていれば、喉に引っかかることはないです。喉を引っ掻くような痛みは、硝子の破片が喉を擦るのによく似ています。


・刺激、痛み

 硝子水が、硝子という言葉を内包するのは、何よりも刺激や痛みが硝子を連想させるからです。炭酸の喉をひりひりと切り刻むような刺激こそ、まるで硝子を飲んだかのように思える実感であり、硝子水が硝子水と呼ばれる所以なのです。

 だから硝子水には、炭酸水の持つ刺激や痛みのニュアンスが強く表れます。


・煌めき

 硝子も水も、キラキラとしているものです。それにサイダーやラムネというと、やっぱり若者や子供が好んで飲むものですから、硝子水には煌めきが宿るのです。


・傷

 硝子水は、痛みを伴うので傷の縁語となります。特に目に見えない透明な液体からもたらされる痛みは、目に見えない心の傷の比喩ともなります。


・目覚め、気付け

 よく冷えた炭酸水の喉を通る刺激は、目が覚めるようで、飲んだ瞬間から意識が晴れ渡るようです。だから硝子水も、人の意識を鮮明にする、目覚めをもたらす一口、気付けの一飲みになります。


・気付け薬

 硝子水の刺激は、眠気を払い、意識をはっきりとさせてくれます。それは気付け薬の効果とも言えます。

 硝子水は、人に意識を取り戻させる気付け薬の神秘を宿しているのです。


・痛みによる生の実感

 硝子水を一息に飲むと、その刺激で爽快な気分になります。それは硝子水の与える痛みが、生きていなければ味わえないものだから、その実感を強く受けているのです。


・青春

 硝子なんで危ないものを飲むのは、青春の若くて危うい日々を思わせます。

 恋、スポーツ、喧嘩、サボリ、そのどれにも硝子水は似合うでしょう。


・爽快

 炭酸水を飲むと爽快な気持ちになるものです。硝子水にも、透明で煌めくような爽快な言霊があるでしょう。


・恋

 サイダーはよく、恋に紐づけられて宣伝されます。硝子水だって恋の刺激を抱いているでしょう。

 特にきゅんと切なく、胸を痛める初恋は、硝子水が思い出させます。


・夏が旬

 よく冷えた硝子水は、暑くてじめっとした夏にこそおいしいのです。これは絶対の真理です。


・涼しい

 硝子水を飲むと、体や心がひんやりと涼しくなるものです。


・寂寥感

 硝子水を飲んだ後には、その刺激で思考が一瞬停止します。まるで秋風が吹き抜けて、木の葉をさらうように、その一瞬でなくなるものもあります。

 その寂寥感をもたらすのも、硝子水の大きな力です。


・冬を内包する

 硝子水は、よく冷えてこそ炭酸の溶解度が上がって、より強くなります。

 つまり、硝子水は冷たさにその実体が左右され、また冷たさ、刺激という厳しさを実体としています。

 冷たく、厳しく、そして透明感のあるというのは、冬という季節です。硝子水は、液体に冬を内包している存在なのです。


・幼さ

 硝子なんて危ないものを飲むのは、それが危ないと分からない幼さの故でもあります。炭酸水は子供の飲み物なんて、世間では思われているようですし、硝子水も薄氷を踏むではなくて、薄氷を飲むような危うさがあるのです。


・少年

 少年は硝子水を好み、硝子水は少年の一部となることに悦びを抱いた。


・透明な歪み

 硝子水は、そこに映る景色を歪めます。その歪みはどこまでも純粋で混ざりけのないものだからこそ、何よりも危ういのです。


・弾ける

 硝子水は泡と弾けて、その泡を失えば硝子水とは呼べなくなる脆いものです。だからこそ、硝子を踏んで破片を弾けさせるように、一息に飲みましょう。

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