未言

未言(みこと)

未だ言にあらず。

①まだ世界に定着していないお手製の造語。いつか、たくさんの人に使ってもらえる言葉となりますように。

②胸の奥に秘められた誰にも、時には自分にすら気づかれない想いたち。言葉になって伝えられるときを待っているのかもしれません。


・想い

 未言は、言葉になれなかった言葉たちのこと。

 言葉には、想い、思想、思考から紡がれるもので、未言もまた『想い』を根源の一つとしています。

 好き、とか、あっ、とか、あはれ、とか、エモい、とか、そんな上手く表現できないけど、心の中に確かにあるぼんやりしたぬくもり。そこに未言はいるのです。


・水

 未言屋店主は、言葉を『水』によく例えます。

 語源は水源。

 同じ語源の言葉は、水源が同じでも、違う位置に湧いた泉。

 言葉の変遷は、川の流れ。

 言葉は人の社会の中でたくさんの言葉と共に一つの言語を成していて、それは海。

 そして言語の中から要素が取り上げられて新しい言葉が生まれる、それは海の水が揮発して雲となり、雨と降って水源へ至るのに似てる。

 『みこと』という音には『水言』という漢字も当てはめられます。未言は水言なのです。


・三

 『みこと』には『三言』という漢字も当てはめられます。

 未言の特徴の一つは、たくさんのニュアンスや意味、言葉のレイヤーを一つの単語に納めていること。

 一単語で三言くらい(あくまでくらい)を文に提供してくれます。

 これのなにが素晴らしいかというと、短歌みたいな定型のモーラが限られた創作で大活躍するのです。なにを隠そう、未言屋店主は和歌を嗜むのですから、言いたいことをたくさん詰め込める未言は大助かりなのですよ!


・光

 言葉が一つあるというのは、一つの物事を認識でき、人に伝えて伝達できるということ。

 言葉があるのとないのとでは、『存在している』という次元が全然違うのです。

 その意味で、未言とは今まで真っ暗な中にあってあるのかどうかわからないものを照らして、存在を証明する『光』にも似ている。

 ちなみに、『光』は『みつ』とも読むので、『未言』と『光言(みつこと)』は音も似てる。そっくりなのです。えへん。


・神秘

 未言になるものは、言葉として発見されてこなかったもの。それは人が手にしていなかったもの。それは即ち、神秘だということ。


・神霊

 かつて、日本の神々には『命(みこと)』という尊称を以て呼ばれました。そう、未言も同じ読みなのです。

 人々が言葉にしなかった神秘が、言霊として神霊に昇華したもの、それが未言なのです。

 同時に、未言は未言となったときに、神格という権能と命を持ったのです。


・巫女

 未言の中に巫女の音があります。

 巫女とは、神霊を身に降ろして神託を告げる者であり、その能力はまさに『言葉』にあったのです。

 未言もまた擬人化する時は、巫女の外見にその存在を降ろすので、未言巫女というものになるのです。


・日常の中の神秘

 ありふれた日常の中にも、まだまだ神秘は隠れています。それは見つけたらちょっぴり幸せとか楽しさとかをもらえるものです。

 例えば、空の一番端の白とか、秋に初めて咲いた金木犀の香りとか、雨が水面に当たって咲く様子とか。

 その一つ一つに与えられた言葉が、未言なのです。

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