03 クリスティーゼの心境



 アルケミシア王国の10人いる王女の末の娘。

 それが私クリスティーゼです。


 私は上のお姉さまたちから愛されて、甘やかされて育ってきました。

 厳しくも立派なお姉さまたちは、とてもしっかりしていたので、私一人が何かをしていなくても、国は平和に機能していましたから。


 男児には恵まれなかったけれど、お姉さまたちはみな才能あふれる者達ばかりで、政治や国のかじ取り、民衆の間で起きた問題解決、王家の求心力の維持など、全てが万全で完璧でした。


 けれど私は、誰かに求められることのない自分の立場に不満を抱いていました。


 私は誰からも必要とされていないのではないか。


 毎日そんな事を思っていたのです。


 ある時、魔王討伐の為に選ばれた勇者様に一目ぼれをしてしまいました。


 それははっきり恋と呼べるもので、その日から色あせた日々が急激に光輝いてみえるようになりました。


 けれど、勇者様には他にもたくさんの素敵な人がいます。

 アルト様には、私よりもお似合いの者達がたくさんいるのです。


 そのため、私は無駄に争わず、そっと見守るだけの恋に満足していました。


 けれど、私に特別な力があると判明して身の回りが一変した後に、王宮までやってきた魔王に攫われてしまった時に、思いを伝えなかった事を後悔しました。


 なぜ、駄目でも勇気を振り絞らなかったのだろう、と。


 それで、魔王城で色々あった後に、私を助けに来てくれたのが勇者様だというのが分かった時は嬉しくなってしまいました。

 だから、助け出された時にいきおいあまって告白してしまったのです。


 そこから今の溺愛されてる現状にたどりつきます。

 でもまさか勇者様が、特別な力を授かるまで大して目立つ事も、期待される事もなかった私の事を本当に好きだったはずはありません。


 接点もそんなになかったはずなのに、どうしてこんな事になったのでしょう。


 愛をささやかれたり、髪の毛をとかされたり、甘いものをあーんとされたり、しまいには頬や額に口づけされたり。

 私がそこから動こうとすると、必ずがっしりと私を抱きしめて、どこに行くのか離さないと解放してくれない。

 それでいざ、離れてみてもアルト様は必ず私の後をついてくる。手をつないでくる、ずっと見つめてくる。


 怖い。

 勇者様に熱っぽい視線を向けられるたびに、私の心臓は氷水に着けられたような心地になります。


 本当に、どうしてこんな事になったのでしょう。

 

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