第2話 積年の恨み

 シャリっと音がして、梨特有の酸味と甘みが口に広がった。


「ずるい、絵里んときだけ」

 お兄ちゃんが不満そうにママに訴える。

「またお兄ちゃんは…。仕方ないでしょ、あなたの誕生日は4月なんだから、果物が少ないのよ」


 …シャリッ。幸水の歯ざわり。


「だって、絵里んときは梨も葡萄もあるじゃん。僕んときはないのに」

「だから、4月にはないから仕方ないでしょ」


 …シャリッ。豊水も好きなのよね。


 なんか、毎年毎年ママとお兄ちゃんが喧嘩して、最後にうちがお兄ちゃんから叩かれて泣いて。


 …シャリッ。梨を食べるたびに、小さい頃のこと思い出すよ。


 お兄ちゃん、9月はね、最近は、シャインマスカットもあるんだよ。でも、あの時うちをいじめたから、絶対大人になってもあげないからね。


 …シャリッ。シャリッ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る