第34話 何やら様子がおかしい


「犬飼……!!」


 ーーあの時、羽川ちゃんを人質にとって、あたしに喧嘩を吹きかけてきた人物。

 それは、昴を傷つけた張本人。

 つまりは、今回の手紙の差出人を意味する。


「あ……? なんか俺に用か? 悪いが俺は待ち合わせ場所に行かねぇといけねぇんだ」


 何か用があるかだと……?

 ふざけるな……!!

 昴を、傷つけた奴が、目の前にいる。

 抑えきれようもない怒りが頭の中を支配する。


 あたしは、そのまま怒りに任せて、犬飼の胸ぐらを勢いよく掴んだ。


「お、おい何すんだテメェ!! ……ってお前!! 神崎じゃねぇか!?」


「あぁ、そうだ……! あんた、どうして関係ない昴を傷つけた!!」


「あ!? 昴って誰だよ、しらねぇよ!!」


 この状態になってもまだ、しらを切るつもりか。


「とぼけるな……!! あたしの大事な友達だ!!! あんたが傷つけたんだろ犬飼!!」


「犬飼……? どうして奴の名前が出てくるんだ……? おい離せ!! 俺は何もして無い!!」


「は……? くだらない復讐のためにあたしを呼んでおいて何を言って……」


「……復讐? なんだかしらねぇが、俺はお前に負けてから一度も喧嘩はしてねぇんだよ!! なんかお前に負けてから、つまらなくなったからな……」


「犬飼……じゃあどうして昴を傷つけた!!」


「だからしらねぇって!! つーか、俺は犬飼じゃねぇ!! 小黒だ!」


(……犬飼じゃない?)


 あたしはそのセリフを聞き、少し胸ぐらを掴んでいた手を緩める。


「……はぁ、なんだってんだよ、なんかラブレターが来たかと思ってなんとか倉庫つーとこに行く予定だったのによ……俺は不良からとっくに足は洗ったつーのに、この仕打ちかよ……」


「倉庫……? どこの倉庫だ」


「あ? 確か……都宮倉庫だが……」


「!?」


 同じ場所だ……。

 何が起こっているのかさっぱりわからない。

 それに、さっきから話が噛み合っていない気がする。

 もしかすると、昴を傷つけたのは、本当にこいつじゃない……?


「……あたしもそこに呼ばれていた」


「あぁ!? どういうことだ……いや、なんとなくわかってきたぞ。偶然にしちゃ出来すぎた話だ。なぁ、神崎。俺たちは、おそらくその犬飼にハメられたんだよ」


「ハメられた?」


「あぁ……さっきから言ってるがお前を呼び出したのは俺じゃねぇ。クッソ……不良から足は洗ったつーのに、この仕打ちかよ……」


「……小黒だったか? ……まだ信じたわけじゃないが、その話、あたしにわかるように詳しく聞かせてくれ」


「あぁ……俺からも聞きたいことが山ほどある」

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