第二章 神崎さんとの学園生活
第10話 不良美少女はイメチェンをする
ーー6月。
季節も変わり目に入り、少しずつ気温が上がり、パタパタと服を仰ぎたくなるようになる、そんな時期である。
だが、そんな中でも僕たちは、放課後、
変わらず、図書館で勉強をしていた。
「それにしても……暑いですね……」
「確かに暑いな……」
クーラーは図書館にも設置されているのだが、学校の規定で、もう少し温度が上がらなければ使えないので、
もう少し、辛抱しなければいけない。
でも、職員室って毎回涼しいよなぁ。
図書館にも冷房つけてくれても良いんじゃないですかねぇ!!
と、直接そんなことを言いに行く勇気もない僕は、
心の中で訴えるのであった。
「あー、そうだ。
いきなり話変わるんだけど……。
昴、あたしがもし、イメチェンしたいって言ったらどう思う?」
唐突に花さんが、質問してくる。
「イメチェンですか? 良いと思いますけど……」
……正直、意外だった。普段そういう話を花さんの方から振ってくることはなかったからだ。
だから、そういうことには
興味がないのかな?
とも思っていた。
「なんか、店長とか、お客さんから
イメチェンした、花ちゃんが見たいって言われててさ……、あたしは断ってたんだけど。
店長が、時給上げてくれるっていうから……」
「なるほど、そういうことですか」
店長さんもやり手だなぁ。花さんの扱い方をわかっている気がする。
それにしても、花さんのイメチェンか……。
フリルがついたメイド服の花さんに……。チャイナドレス服の花さん……。または、ゴスロリを着た花さんに……。警官の花さん……。
うん。どれも似合いそうだ。
「まぁ、イメチェンっていっても、髪型変えるくらいなんだけど」
僕の願望が、一瞬で砕け散った。
うーむ……ちょっと……いや凄く見たかったなぁ。
「でも、髪型変えるだけでも結構印象変わると思いますよ?」
「あー、そんなもんなのかな……。
……なんか……お客さんには……その……」
ん? いつもは気怠げで、かつ、冷静な花さんがなんだかモジモジしている。
「どうしたんですか?」
「その……ツイ……ールをして欲しいって……」
「すいません、聞こえなかったので、
もう一回お願いします」
いったいどうしたんだ? 花さん。
「……ツインテールを……見たいって…」
あ、ツインテールか!
そして、気がつくと
花さんの顔がいつの間にか、
真っ赤になっていた。
「やっぱり、あたしがツインテールなんて似合わないよな……」
「いや、花さん、可愛いのでなんでも似合うと思いますよ」
何を言っているのかと、
あっけらかんと
答える。
「!? かわっ……かわいい!? そ、そういうことを……簡単に言うんじゃない!」
「ちょっ! やめっ……! いたっ! ポコポコ叩かないでくださいって花さん!」
「全く……」
何故か、叩かれてしまった。
素直な感想を言っただけなのだが。
何がまずかったのだろうか。
からかっているのとでも思ったのだろうか?
実際、花さんなら、なんでも似合いそう
だから本心だったのだが。
「……こほん。まぁつまり、ツインテールをするわけだが……何もわからなくてな」
「なるほど、ツインテールって色々高さとかで変わると思いますし、こういうのは女の子に頼んだほうがいいですね」
「そうだな」
「誰か良い人は……」
「「あ、いた」」
♢♢♢
「それで私と呼んだと言うわけね!」
「あーうん。まぁ消去法で……いや、
羽川ちゃんしかいないと思って」
「……何か聞こえた気がしたけれど、聞こえてなかったことにしておくわ。私がきたからには任せなさい!! 元々、神崎さんは、私も可愛いと思ってたのよ」
「ですよね」
すかさず相槌を入れる。
「お、お前ら二人して……!!」
ゴゴゴゴゴゴ。
まずい。
花さんの圧を感じる。
「と、とりあえず、羽川先輩にやってもらいましょ! 花さん! ね!?」
俺はなんとか花さんの怒りを抑えようと声をかけた。
「うん……」
「私に任せなさい!! 宮本くんは、お楽しみってことで、
ちょっと待っててね!」
そう言って、花さんと羽川先輩はどこかへ
消えた。
ーーそして30分後。
「お待たせ! 宮本くん!!」
「あれ、花さんは……?」
「それが照れちゃって、隠れてるのよね」
「隠れてる……?」
あ、ほんとだ。いた。
身体の半分以上が隠れているが、物陰から、
ちょこんと花さんらしき人影が見える。
なんだか、いつもの花さんと違って
しおらしく、まるで小動物のような可愛らしい姿が見えた。
「ほら! 神崎さん!! 宮本くんが待ってるわ!」
「……わかったよ」
気怠げそうに、花さんはゆっくりと、物陰からこちらへ歩いてきた。
「おおおおおおおおお」
思わず、声が出る。
ぴょこんと左右にゆらゆらと揺れているサラサラの髪の毛。
控えめに言って可愛すぎる。
そして、凄く似合っている。
美人はなんでも似合うという伝説は
本当だったんだ。
いつもとは違う花さんの一面を見れた
気がして、嬉しくあった。
「花さん、とても似合ってますよ!!」
「そうか……?」
花さんは落ち着かない様子である。
「じゃ、記念に写真撮るわね」
「は?」
花さんは唖然としている。
パシャっ。
「あ、羽川先輩、後で僕にも送ってください」
「……」
「勿論、いいわよ」
「お前らあああああああああああ」
「うわあああ! なんでそんなに怒ってるんですかああああああああ」
顔を真っ赤にした花さんから
必死に逃げる
僕たちであった。
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