第5話 不良美少女とテスト本番
ジィリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
朝を告げる目覚まし時計が今日も一日頑張れよと言わんばかりに部屋に鳴り響く。
非常にうるさい。
ポチッ。
「くそー、朝が来てしまった……」
目覚まし時計を止め、悪態をつく。
あれから2日が経ち、今日はいよいよ、テスト本番である。
なのだが……。
「やっぱ、眠い!!」
ガバッと布団に身体をうずめる。眠いのは、今日に限ったことではない。僕はとても朝という時間に弱いのだ。そんな僕を尻目に、日差しがこれでもかというくらいに襲ってくる。
ガチャッ。
「おにーちゃん!!」
ドサッ。
被っている布団の上に、妹が、全体重をかけて、のしかかって来る。
うっ。重たい。お兄ちゃん死んじゃう。
「おにーちゃん、おくれるよー? 早く起きてー!!」
「わ、わかったわかった」
僕は、妹を抱っこしながら、リビングへと
向かう。
僕の8つ下、小学1年生の妹である。
まだまだ甘えん坊の妹だ。
「あら、やっと起きたのね、
もうご飯できてるわよ」
「へーい」
♢ ♢ ♢
今日の朝ごはんは、味噌汁とご飯。
そして、油の良い匂いが鼻に幸福をもたらしてくれるサンマの塩焼きである。
これでこそ、日本食。と言った感じだ。
「そういえば、昴、最近、放課後遅いけどなにしてるの?」
あぁ……そうか、すっかり忘れていた。
今まで学校が終わればすぐに帰宅していた僕が、遅く帰って来ていたら確かに
不思議に思うのも当然だ。
「いや、まぁ、用事というか、そんな感じだよ」
説明するのが、難しいのでとりあえず
用事ということにしといた。
「用事……? なんか怪しいわね、危ないことしてたらお母さん許さないわよ」
「ゆるさないわよー!!」
妹も、母の真似をし、加勢してきた。
二人とも疑いの目線を送っている。
「別に悪いことはしてないから大丈夫だって!」
その後も、終始疑われていたが、
まぁ、悪いことはしてないということで
なんとか乗り切った。
♢♢♢
「ふぅー朝は大変だったな……あと30分くらいあるし、とりあえず復習しとくか」
丁度30分経ったくらいだろうか、
ガラガラガラ。
担任の先生が入って来た。
「それじゃあテストをはじめるぞー、関係のないものは全部しまえー」
テスト開始である。
カリカリと解き始める。
「あれ……? ここどうやるんだっけ」
まずいな、ど忘れしてしまった。
ここも復習しておくべきだったか。
いや……待てよ。ここ確か、花さんに教えた公式の基本形だよな……。ってことは……思い出した!!
「時間だー、テスト集めろー」
「これで、全部終わりっと」
思ったよりできた気がする。
花さんとの勉強が役に立った。
そういえば、花さんは大丈夫だろうか。
花さんは一つ学年が上なので、
僕らとは違う
試験の時間で行われると聞いていた。
「なんか気になる……」
昨日も、勉強を行ったのだが、
花さんはとても眠そうにしていた。
まさか……寝坊なんてことはないよな……!?
あれだけバイトと両立させて、
頑張っていたのに、寝坊で終わって
しまったら花さんもショックだろう。
「一応、見に行ってみるか……」
♢♢♢
「上級生の教室なんてはじめてきたなぁ」
えーと花さんのクラスはっと……。
あれ? そういやクラスなんて聞いたことなかったぞ。まずいな。
誰かに聞かないと、でも緊張するなぁ。
とりあえず話を聞いてくれそうな人を探す。
あの人なんか、良い人そうだな。
よし、あの人に聞いてみよう。
「あのー突然すみません」
「ん? 君は……? 見ない顔だけど、
どうかしたの?」
「実は聞きたいことがあって……花さ……いや神崎花さんって知ってますか?」
「勿論、知ってるわ。というより、この学校で知らない人なんていないんじゃないかしら。それに……あの子は本当に忠告を聞かないんだから……」
何やらブツブツ言っている。
何か花さんと、あったのだろうか。
「あら、ごめんなさい。話が途切れてしまったわね。その神崎さんがどうかしたのかしら?」
「いえ、神崎さん、きちんと学校に来てるかなと思って」
「神崎さん、そういえば今日は見てないわね……」
「本当ですか!?」
「え、ええ……」
「ちなみに、2年生はテストは何時から……?」
「そうね、あと、1時間くらいかしら」
まずい。神崎さんがどこに住んでいるか
わからないが、それでも今から用意をするならば、時間は限られている。
「あの、神崎さんの携帯の番号知ってたら教えてくれませんか?」
「ええ、いいわよ」
「ありがとうございます!」
人気の少ない場所に行き、早速、花さんに電話をかける。
プルルルルルルル。プルルルルルルルル。
なかなかつながらない。
「頼む、繋がれ!!」
プルルルルルルルル
ガチャ。
「出た!! 花さん、テストもうすぐ始まっちゃいますよ早くしてください!」
「んー……ふぁい? だれー?」
……ふぁい!? なんだこの気の抜けたふにゃふにゃ声は!?
いつもの花さんじゃない!!
そうだ、これは間違いなく、
……寝ぼけている!!
「ふぁいじゃないですよ花さん!! 昴です昴!! テスト始まりますよ!!」
「しゅばる〜? しゅっ、しゅっ、しゅばしゅば〜」
「何を歌ってるんですか! 早く起きてください!!」
「しゅばる……昴……?
昴……もしかして昴か!?」
「そうですよ!! それよりも試験始まりますって!!」
「まずい!!」
ダダダダダダダダダダダダッ。
花さんが急いで用意している姿が
物音でわかった。
「良かった、花さん気付いてくれて……、
ってええ!?」
通話を切ろうと、スマホを
耳から外すと、なんと着替えている花さんの姿がそこにはあった。少しダボっとした大きめのパーカーを捲り上げると、ピンク色のフリルがついた下着が露わになる。
美少女が通話越しに着替えている。その事実に、思わず、ゴクリと息を呑む。
(意外と女の子っぽい下着……って違う違う! それよりも、な、なんでテレビ通話に!?)
急いで、ボタンを押して、元の通話画面に戻そうとしたのだが。
(も、戻らない!)
このアプリは、どうやら、テレビ通話に切り替えた方でしか操作ができないみたいだ。つまりは、僕が押したわけではなく、恐らくは、花さんが慌てて、気付かずに、テレビ通話にしてしまった可能性が高い。
「暑いから、下着も着替えるか……」
しかし、そんなことになっているとは、
知らない花さんは、さらに可愛らしい下着に手をかけて……
「ストーッッッップ!!」
僕は、急いで、スマホの電源を切り、
強制終了させる。
「危なかった……」
……というか、今更だが、最初から早く気付いて、通話を切っておけばよかった。太ももに続く、第二の事件を起こしてしまうところだった。
「神崎さんいたかしら?」
「おわっ!!」
「あら、ごめんなさい驚かせちゃったわね。
神崎さんは、無事かしら?」
「今起きたみたいで。まぁ、とりあえず、用意してたんで大丈夫そうですけど」
「本当にあの子は……。ちゃんと指導しなくちゃいけないわね。君はもう帰っても大丈夫よ。テストで疲れてるでしょ?
神崎さんは、私が引き継いでおくわ」
「わかりました、ありがとうございます」
たまに優しい人に見えて、怖いっていうパターンの人もいるけど、見かけ通りの良い人だな。この人。
なんだか、神崎さんと面識あるみたいだし、この人に任せておけば、後は大丈夫かな。
「じゃあ、お先に失礼します」
「ええ、気をつけてね」
ーーその後に、花さんから聞いた話によると、
テストには間に合い、そこそこの
点数は稼げたみたいだ。
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