第2話

 寝室へ向かうと、ベッドの上には脱ぎ散らかしたスーツ。それを見てため息が出てくる。

 仕方なくそれを手に取って、ハンガーを取りにクローゼットへ向かった時のことだった。


 左足の小指が寝室の本棚の角にクリーンヒットしてしまったのである。

 思わずしゃがみ込むと、今の衝撃で本が頭の上に落ちてきた。背表紙の角はなかなかに痛く、咲彩はこの時、次の休み(があれば)に模様替えすることを心の中に固く誓った。


 頭を経由して床に落ちてきたのは、子供の頃大好きだった「シンデレラ」の絵本だった。そういえば、身の程知らずに憧れていた頃もあったなあ、と思い出に浸りながらページをめくった。

 子供の頃の幸せな思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。


 そういえば、中学生の時に枕の下に好きな人の写真を入れて寝るとその人の夢が見れる、なんて胡散臭いおまじないを信じていたことを思い出し、シンデレラの絵本を枕の下に入れた。

 急いでスーツをハンガーにかけ、いそいそと布団に潜る。こんなに眠るのが楽しみだったのはいつ以来だろうか。


 今夜は良い夢が見れそうだ。

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