そして十二時の鐘は鳴った。

都稀乃 泪

第1話

 月明かりもない、新月の夜。街頭に照らされ夜のビル街を一人で歩く女が。

 今日も彼女は、よれよれのスーツに身をくるみ、終電に駆け込んでいく。


 名前は間城ましろ 咲彩さあや。社会人になって早二年。もうすぐ三年が経とうとしている。

 次の停車駅で降りるので、席を立ち扉の前に移動する。人はもう数えるくらいしか乗っていなかった。


 なんとか家まで辿り着く。玄関に荷物を下ろし、スーツをベッドの上に脱ぎ捨てる。

 下着姿で彷徨うろつくのも、そろそろ寒くなってきた。冷蔵庫の冷気に当てられ、身震いする。中には大量の栄養ドリンクと少しのビール、賞味期限切れの卵に漬物しか入ってなかった。


 どこかに買いに行く気力もない。仕方が無いので、買い溜めしてあるショートブレッド風のお菓子を貪る。食欲はあまり無い。


 歯磨きをしながら、ぼんやりと「どうしてこうなってしまったのだろう」と考える。

 いくら考えても答えは出ない。


 は生きる為の行為だけれど、ここまでして生きている意味などあるのだろうか。

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