第29話

 十二月半ば、学校は二学期の終業式を迎えた。

 体育館で先生方の話を聞いたあと、成績が返却される。

「あ~。緊張する、通知表」

「わかる、成績が返却されるのは、結構緊張するし」

 担任の先生が成績が書かれた通知表を持ってきた。

 教室にはピシッと緊張感が張りつめた。

「それでは出席番号順に渡していきます」

 みんなが話ながら、一緒に成績を返されるのを待った。




 ちょうど悠里ゆうりが教室に戻ってきた。成績はキープしているらしく、かなり安心した表情をしていた。

「うわ、櫻庭さくらば。あいつ……二学期も学年トップか……すげ~」

 みゃーちゃんと一緒に話していたけど、悠里の成績は変わらなかったらしい。

「次、たちばなさんだよ!」

 わたしの番はあっという間にやって来た。

 廊下に出ると、芙美ふみちゃん先生こと佐伯さえき先生が立っていた。

 まだ二十代後半で、今回初めて三年生の担任をしているため、C組の宮野先生とかに教わっている。

「橘さん。二学期の成績、とてもがんばっていますね」

「え?」

 通知表をもらうと、文系も理数系も3以上の結果だった。

「え……ほんとですか? 期末テストであんなに悪かったのに」

「中間テストと提出物をちゃんと出しているから、大丈夫。これからも続けてね」

「はい」

 教室に戻ると、みゃーちゃんが結果が気になっていて、ウズウズしているのは知っていた。

「どうだった?」

「理科と数学が3、国語と英語は4、副教科は音楽と技術・家庭が5だった。」

「え!? すごいじゃん。他の副教科は?」

「4と3」

 通知表を見ながら話していた。

「内申の計算すると、結構上がってきてるね! 小夜、うちよりも成績が良かったりして」

「そんなことはないよ! みゃーちゃんの方が良いよ!」

 わたしはみゃーちゃんが成績をもらいに行って、教室に戻ってきたときはニコニコしながらやって来た。

「どうだった?」

「え~と。現状維持、一学期と全く同じだったよ~」





 終業式から下校するとき、わたしは二年生の教室に向かった。

雪華ゆきか、帰ろ~」

 雪華はまだ松葉づえで、少しだけ手伝ってるんだ。

「お姉ちゃん。この荷物、持っててくれない?」

「いいよ~、大荷物だね~」

「うん。成績、どうだった? お姉ちゃんは」

 家に帰るときに話題が上がった。

「え~とね、結構上がってきてる。二学期は特にね! 期末テストでヤバかったのに」

「へぇ~。提出物を出せてる?」

「うん!」

「それだね。うちも成績は一年生のときと同じような成績」

 雪華は絶対に都立の進学校に行きそう。

 わたしは都立神村北高校を第一志望に決定していて、あとは追い込んでいくだけだ。

 悠里が志望校は絶対に教えてくれなかった。

 気になるけど、もう聞くのは諦めた。

 これからは自分の道に進む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る