第26話

「あ~あ! 悠里ゆうり、訳わかんないよ~!? 期末テスト、来週だし~」

 土曜日の午前中、悠里と一緒に勉強を始めた。

「え~? お前はここの問題集をやっていれば、いいと思うよ?」

 今日は悠里が料理を教わりに来ていた。

 卵焼きを作って、食べたあとにそのまま勉強を始めたんだ。

「悠里は都立のレベル、落とすの?」

「あ、うん。東台にいて学年トップを維持するより、中堅校でずっと守れればいいかなって」

 わたしは相変わらず、都立の過去問の問題集を買ったけど……予想以上に難しいんだ。

「小夜。大丈夫か? その問題」

 間近で見ると、悠里はとても大人に見えてくる。

 半年間同じクラスにいると、ふとした表情が別人のような雰囲気なんだよ。

 ――やっぱり、メガネかけない方がかっこいいな。

 彼は黒の細いフレームのメガネをしている。

 たぶん、視力が低い。

 レンズ越しに見えるのが小さく見える。

「小夜。どうした?」

「え!? あ、うん。メガネ、ずっとかけてるからさ」

「あのさ。はずしてみたら?」

 思わず言っちゃったけど、はずしてくれたんだ。

 少し切れ長の瞳に整った顔立ち……いつもより、大人っぽい印象だ。

「かけてもいい? もうちょっとで、塾」

「あ、うん、ありがとう!」

「卵焼き、もうちょっと……うまく作れるようにするな」

 そう言って、悠里はそのまま塾に行く。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

 雪華ゆきかが一緒に勉強を始めるけど、わたしの様子を気になっているみたいだ。

 二年生の問題集を片手に少しだけ頭を抱えちゃってるみたいで、それは社会科の問題集だった。

「地理。全然、意味わからない、お姉ちゃん。わかる?」

「雪華……いつも地理だけ、もうちょっとなんだよな~」

 わたしは雪華に教えてから、そのま塾へと通うらしい。

 そのあとに永莉えりちゃんからの宿題を始めることにしたんだ。

 母さんが仕事で午後も急に行くことになって、わたしは夕飯の支度を始めた。

 麻婆豆腐にして支度を終えたし、再び宿題を始めた。

 勉強の成果がでているのか、ここ最近の小テストの成績が良くなってきている。

 特に理数系の科目。

 いままでは全然わからなかったけど、二学期からは全然わかる。



 十一月中旬には期末テストがあるため、ここで成績を上げなきゃ、ほぼ志望校が確実になるんだ。

「あ、お姉ちゃん」

 悠里は都立の進学校のレベルのなかで、中堅校にするのかもしれない。

 わたしは少しだけ、自信を胸にテストの解答用紙に答えを書いていた。

 放課後。

 隣のクラスのみゃーちゃんと華乃かのともと合流して、帰るんだ。

「みゃーちゃん、お疲れ様。テスト」

「雅はどうだった?」

 みゃーちゃんは全然手応えがないらしくて、不安そうにしている。

「みゃーちゃん、大丈夫だよ」

 聖愛女学院を受けるみゃーちゃんは、来年一月には推薦入試を受けるんだ。

 華乃と朋は藤池大学附属高校を受けるって。たぶん、推薦かな?

 それぞれの進路がある程度は決まっていくんだ。

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