第3話

 体育の授業があった。

 わたしは百メートルの記録を測ることになった。

「橘さんと河野こうのさん、位置について、よーい」

 百メートルを一緒に走るのは、陸上部の河野さん。現役の陸上部部員と走ることになった。

 ダッシュで、走っていく。

「河野さん、速い!!」

 コーナーを回って、そのままゴールする。

「河野さん、十四秒〇二。橘さん、十四秒九六!」

 十四秒台……自己ベストじゃん!

「やった~! みゃーちゃん!」

 雅と一緒に喜んでいると、一人だけで走る人がいた。

七海ななみ~! ガンバ~!!」

 二年生の頃に転校してきた大月七海さんだ。前の学校でも陸上部で、全国大会に出場したこともある実力者だって、聞いたことがある。

 大月さんが走っていくと、あっという間に帰ってきた。

「大月さん、十三秒九八!」

 その記録を聞いて、みんなでびっくりしてしまった。

「すげぇ! みゃーちゃんの記録、抜いた!」

「強!」

 わたしはびっくりしてしまった。

 男子はどうやら体育館で授業をやっている。

 悠里とは席替えをしたため、遠くに離れてしまった。

「あ、花怜カレン、今度の日曜にカラオケに行かない? 暇だったら」

「その日は親戚の法事で出掛けるから。ごめん」

 久保田花怜さんは小学校が同じで、年上の彼氏がいると噂を聞いたこともあるくらい。

 アメリカとのハーフで、幼稚園の年長から同じなんだけど、英語は抜群にうまい。

「花怜! 早く帰るぞ!」

 五時間目までは雅と華乃かのともと一緒に少しだけ予習をするのが、いつもの日課だった。

「ねぇ、明日からテスト一週間前だよ?」

「現実を突きつけないで! 現実逃避する!」

 雅がノートの上に突っ伏す。

「みゃーちゃん、聖愛せいあい女学院を受けるんでしょ?」

「うそ! 聖愛? この辺でもめちゃくちゃお嬢様学校じゃん!」

 聖愛女学院は初等科から大学まであって、この辺じゃ佐久間女子高に次いでの古さで誇る伝統校。

「部活とかも活発だし。聖愛は勉強も面倒を見てくれるし」

「みゃーちゃん、聖愛に行ったら、モテそう」

「確かに。朋は? 高校?決めたの?」

「夏休みに見学に行く予定だよ」

「どこに?」

 朋は近くの藤池ふじいけ大学附属高校と聖愛女学院高等科の見学に行くみたい。

「すごいな、藤池附属? あそこって、結構進学校みたいな感じがするけど」

 朋の母さんが藤池附属の卒業生で、卒業生優遇みたいなのがあるみたいだから、それを使って推薦を狙っているみたい。

「華乃は?」

 華乃は考えて、藤池附属か桜木さくらぎ学院高等部を受けるみたいだった。

「すごいね~。うちよりも、上の学校を目指してて」

小夜さよは? 高校どこにしたの?」

 わたしは考えている高校を言った。

「できるなら、都立で行きたいな。神村北かみむらきたかな? 私立だと佐久間女子高とかかな……そこら辺しかない」

 雅は考えている。

「うーん。小夜。神北、ちょっと危ないかもね。このままの成績だと」

「え! 母さんの母校なのに~。」



 五時間目が始まったとき、少しだけ考えてみた。

 二年生の成績で考えてみると、この辺でほんとに行ける都立高が呉原くらいしかない気がする……ヤバいな。

 ただいまの状態だと、暗雲が立ちこめ始めているのは間違いじゃなかった。

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