『つぶれたパンダさん』

『つぶれたパンダさん🐼』

　ほら、みてごらん

　あそこに、半分、つぶれたパンダさんがいるよ

　ちょっと、どろまみれだけど

　おめめは、しっかりと、明いている

　片方のおてては、土のなかに埋まっている

　でも、もう片方は、まるで手をふるように

　持ち上がっている

　ここには、おうちがあったらしい

　大きなわざわいがあったんだろうか

　ぼくらには、わからない

　でも、あたり全部が、でこぼこな地面に

　おおわれている

　きっと、むかしは、ここで、

　お友達と、仲良く遊んだり

　ご飯を食べたりしたんだろう

　おめめを見たら良くわかる

　いまでも、その、うつろなおめめは

　そのころを、夢見ているんだ

　迎えが来るのを待っているんだろうか

　でも、きっと、もう

　だれも来ない

　だれもね

　みんな、いなくなったんだ

　人は、利口な生き物なのに

　喧嘩ばかりしていたなあ

　ま、ぼくらも、喧嘩はするけどね

　地球を焼いたりはしない

　ぼくらは、通りすがりの渡り鳥だから

　ここには、食べ物もないから

　だから、また、飛んで行こう

　おや、

　何かがやってきた

　おかしなやつだな

　みたことない、大きな鳥さんだ

　あたりを、何回か回って、降りてきた

　あり？　

　中から、誰かが出てきた。

　あ、おじいさんと、おばあさんだ

　よろよろと、このあたりをさがしている

　でも、すごく、いそいでいるらしいけど

　からだが、上手には、動かない

　あ、パンダさんを見つけて抱き上げた

　ああ、良かったなあ

　パンダさんを探しに来たのかしら？

　人間にも、優しいところはあるんだな

　おかしな鳥の中から、変わった生き物が、手をふって叫んでいるよ

　頭がでっかくて、身体中、どこも、奇妙にぶくぶくと、ふくらんでる

　ふたりは、すこし、無理やり、鳥のお腹に戻された

　あああ、

　大きな波がやって来た

　たいへん！

　ぼくらは逃げた

　へんな鳥も逃げた

　ぼくらは、そいつの回りを、

　何回か飛びまわってやった

　生き残りの人間が、いくらか、お腹に入ってるらしい

　あのパンダさんも、あそこにいるんだろう

　ぼくらは、また、海の彼方に飛んでゆく

　陸が海に変わってゆく

　うっとうしい、お空だなあ

　みんな、どこに行ってしまったの？　

　食べ物が、見つからないなあ……

・・・・・・・・・・・・・　🕊️

　　　　　　　　　　　おしまい