3.ほぼ∞回目+3回目

「君達が『あの世』と呼んでいる『ここ』の決まりは、人間が勝手に作った法律とは違う。君は罪人だが、それでも君の命を奪う事に関わった検事や裁判官や刑務官には、死後、然るべき罰が与えられるだろう」

 黒装束にデカい鎌を持った骸骨……要は「どう見ても死神にしか見えないナニか」は、死刑になった犯罪者である俺からしても、かなり非倫理的にしか思えない事を口走った。

「いや、俺が死刑になったのは当然だし。……まぁ、死ぬ時は恐かったけどさ。大体、刑務官のセンセイや検事とか裁判官とかは怨んでねぇよ。あの人達だって、仕事だから、しゃ〜ねぇだろ」

 大体、俺は死ぬ前は死刑賛成派だった。正確には今でもだ。法律に従って人を死刑にした事が罪になるんなら、ここの決まりだか何だかは、俺の信念とは相容れない。

「君の怨みや憎しみや信念は関係ない。仮に、君が君を殺した奴等に感謝していようと、奴等の罪は罪だ」

「待てよ。アンタ、かなりムチャクチャな事言ってないか?」

「人間界では、被害者が情状酌量を願い出れば、犯人への罰が軽減されるかも知れないが、ここは人間界ではないし、私は人間では無い。ついでに、君も、もう厳密には人間じゃない」

「わけわかんね〜よ。やっぱ、ムチャクチャすぎだろ」

「無茶苦茶では無い。公正なだけだ。そして、公正と言うのは、時に非人間的なモノなのだよ。ところで、問題は君の魂のこれからだ」

「地獄行きでしょ。どうせ。覚悟はしてるよ」

「いや、それは、君より多くの人達を直接的・間接的に殺した者達が辿る道だ。君は一人しか殺してないので、別の罪の償い方が有る」

 待て。「君より多くの人達を直接的・間接的に殺した者達」って……おいおい、まさか、コイツらの論理だと、俺より、あの刑務官のセンセイとか裁判官の方が罪が重くなるのか?

 そんな事、俺みたいな「死刑になった犯罪者」でも納得出来ねぇぞ。

「だから、何度も言う通り、公正と言うのは、時に非人間的なモノなのだよ。君を殺した連中を、人間達が、どう評価するかは、人間界の問題なので、私の関心の対象外だ」

 そうか、ここは「あの世」なんだから、死神の野郎が、俺の考えをテレパシーみたいなモノで読めてもおかしくは無い。

「納得出来るような、出来ないような、変な理屈だな、おい」

「話を戻そう。君を殺した連中が死んだ後の事に関する説明は、あくまで規則に基く義務的な説明で、君にとっての問題は、君と君が殺した少女に関する事だろう?それを今から説明する」

「地獄行きじゃないとすると、どうなるんだ?」

「そうだな……。喩え話で説明すると『カエルを一匹殺した者は、カエルに生まれ変って殺される運命にある』って所かな?」

 その言葉の意味を理解した時、この「死後の世界」ってヤツが、俺の予想を遥かに超えるロクでも無い場所だと悟った。

 何度も言うが、死刑になった犯罪者である俺にとってさえ、極めて非倫理的で、これっぽっちも納得出来ない、ムチャクチャすぎる場所だ。前提がおかしいが、百歩譲って、そのおかしい前提を認めてしまうと、確かに妙に筋は通っているので、余計に不気味極まりない。

 そして、俺は転生した。

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