第66話 いくら何でも急展開すぎない?
ディアルマ王子が去って、また一人になった部屋。私はさっきまでの、ディアルマ王子との会話を思い返していた。
「国に帰りたくはありませんか? カタリナ様」
「はっ……!?」
「シッ。声を潜めて」
思わず大声を上げそうになった私を、ディアルマ王子が制する。私は言われた通りに口元を手で押さえ、ディアルマ王子を見上げた。
「……失礼ながら、このまま話を進めさせて頂きます。でないと怪しまれますので」
「は、はい……」
「カタリナ様。僕は、貴女を救うつもりで今日、ここに来ました」
真摯な瞳で、そうディアルマ王子が言う。その表情は、嘘をついているようには思えなかった。
「……何故?」
「この婚約は、僕の本意ではありません。父や兄達が勝手に決めた事です」
言ってディアルマ王子は、小さく首を振った。それは今までに見たどんな人よりも、悲しげに映った。
「近いうち、この城は戦場になります」
「え?」
突然の宣言に、私は目を丸くしてしまう。困惑する私をよそに、ディアルマ王子は小声で更に続けた。
「近く僕は、父達に対しクーデターを起こします。ここにいては、貴女も巻き込まれる」
「ちょっ、ちょっと待って。急すぎて、話についていけないんだけど!」
「僕は兄達と違い、側室の子なんです」
そして突然始まる自分語り。ち、ちょっと何なのこれ。
例えるなら、いきなり別の物語のクライマックスシーンに放り込まれたような。あの、私、自分のところの物語で手一杯なんだけど!
その後もディアルマ王子の自分語りは続いたけど、長いし私には関係無い事なので省略。まぁ纏めると、自分を虐げて国民や周辺国にも非道の限りを尽くす父や兄を打倒し、この国を変えたい。という事らしい。
「……これは僕の問題です。それに貴女を巻き込む訳にはいきません。ですから、一刻も早くこの国を出て欲しいのです」
最後にそう締めて、ディアルマ王子は再び真っ直ぐに私を見つめた。私はその言葉に、少し考え込んでしまう。
この人、多分嘘はついてないと思うんだけど……ちょっとどこまで信用していいか解らないのよね。嘘はついてないけど本当の事を全部言ってもいない、って事も有り得るもの。
だから私は、急な事だから少し時間が欲しいとだけ告げ。三日後にまた返事を聞くという事で、一旦別れたのだった。
「ハァ……何でこう次から次へと面倒事ばっかり起こるのよ……」
呟き、盛大に嘆息する。とは言えただ嘆いていても、状況は変わらない。
まずは、ディアルマ王子を本当に信用するべきか見極める。その為に、可能な限りの情報収集をする。
上手く出来る自信がある訳じゃないけど……ここが踏ん張りどころよ、私!
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