第42話 ミリアムとマリクの隠し事
「イネス伯爵家について知ってる事を教えて欲しい?」
ミリアムの様子とマリクの態度。二つがどうしても無関係には思えなかった私は、返す足で、シエルと共にヨシュアの元に向かった。
私を見た途端、ヨシュアは露骨に嫌な顔をしたけど……。まぁ、あんな姿を見られていれば、そうもなるわよね。
「そう。情報通の貴方なら、何か知ってるんじゃないかと思って」
「嫌だよ。そんなの、僕は何も得しないじゃないか」
「まぁ、ではヨシュア様はあの事をバラされてもいいと仰いますのね?」
シエルがそう言った瞬間、ヨシュアの顔色がサッと変わる。そして声を潜め、私達にこう言った。
「解ったよ! その前に場所を変えよう。家庭科室で待っていて」
その言葉に頷き、私達は場所を移動したのであった。
「……ハァ。本当に、厄介な秘密を知られちゃったものだよ」
家庭科室に移動して。私達の後からやってきたヨシュアは、開口一番そう言った。
「貴方が食い物にしてきた人達の気持ち、少しは解ったんじゃないかしら?」
「言っとくけどあれは、脅されるような事をコソコソする方が悪いんだよ。清廉潔白に生きてれば、脅す余地なんてないって言うのにさ」
「それに関しては同意出来る部分もあるけど……とにかく、情報を頂戴」
そう急かすと、ヨシュアは手近な椅子に座り、それから話し始めた。
「まず言っておくと、イネス伯爵家自体には別に面白い話はないよ。あそこはこの国でも有数の、潔白な家系だからね」
「じゃあ、変わった話は特にない?」
「そういう訳でもない。……マリク先生の事は知ってるかい?」
「ええ、妹のミリアムは私の親友だもの」
「じゃあ、彼が養子だと言うのは?」
「え?」
それは初耳だ。前世の記憶にも、そんな知識はない。
……と言うか、ねぇ、この
「それは本当なの?」
「確かだよ。病気で両親を亡くしたところを、イネス伯爵に引き取られたらしいね」
ミリアムの家にそんな事情があるなんて知らなかった。親友だと思ってたのに、私はミリアムの事何も知らなかったのね……。
「そうそう、マリク先生と言えば、近々イネス伯爵家を出て元の家を再興するつもりだって噂を聞いたよ」
「……え?」
「と言うか、元々そういう約束での養子縁組だったらしいね」
マリクが、イネス伯爵家を出る? もしかしてそれが、二人の様子がおかしい原因なの?
でも、二人が特別仲が良かったような記憶はない。それどころかミリアムは、マリクを避けていたような節すらある。
うーん……何だか、余計に訳が解らなくなったような……?
「僕の知っている事はこのぐらいだね。……ところで、何で急にイネス伯爵家の事を調べ始めたんだい?」
ヨシュアのその問いには答えず、私はシエルと共に家庭科室を出た。
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