第6話
それから、マスゴミと云うマスゴミが俺を馬鹿にしているようにしか思えない事態が起きた。
後から聞いた話では、単に、大事件が起きていなかった時期の穴埋めの面白ニュースと云う扱いだったらしいが、当時の俺に判る筈も無い。
「ネット上で言われている『ヴォルテールの名言』は本当か?」
「どうやって『ヴォルテールの名言』ならぬ『ヴォルテールの霊言」は広まってしまったのか?」
「ヴォルテールさんは、そんな事言わないッ‼」
気付いたら、SNS上で、過去にヴォルテールの名言――ブサヨどもに言わせれば「霊言」――を引用したヤツを吊るし上げる祭が始まっていた。
当然、俺も笑い物にされた。
俺は、最初の内、それにイチイチ反論していたが、ほんの数日で、SNSの通知には「なに、ムキになってんだよwwww」と云う嘲笑が並ぶ事になった。そう、少し前まで、俺がブサヨどもに散々言ってきたセリフだ。
だが、とうとう、最悪の事態が起きた。「霊言」と称する嘘八百で有名な某宗教団体が、やってはいけない真似をやったのだ。
「『ヴォルテールの霊言』発売‼「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」はヴォルテールの真意だった‼ ヴォルテールの霊が我が教祖に語った信念とは⁉」
馬鹿野郎……。
こうして、かつて、SNS上で「ヴォルテールの名言」を引用した事の有るヤツは、更に馬鹿にされる羽目になった。
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