ガザニアの花を咲かせて
城崎
序章
主人公のペルラは、敵対する家に生まれた者同士で愛し合ったがゆえに故郷を追われた両親の元へと生まれた。
彼女が誕生した日には雨が降っており、決して良い天候ではなかった。しかし二人は、互いの血が繋がった娘の誕生を心より祝福した。
そうして三人となった家族の生活は細々としたものではあったが、まさに幸せそのものであった。
そんな彼女が五歳になった折、反乱軍が起こした戦火によって、彼女の家を含めた村が焼かれてしまう。ペルラは、焼ける家の下敷きになった両親を助け出そうと彼らの腕を引くも、幼い彼女には少しも動かすことが出来なかった。
絶望からその場に立ち尽くす彼女の元へ現れたのは、村へ派遣された兵士の一人であるネクロマンサーの青年である。彼は両親の助けを求める声に応え、泣きじゃくり叫ぶペルラの身を抱えて安全な場所へと避難させた。
その際に彼女が見たのは、なにもないところから出てきた生気のない人間らが、飛んでくる火を防ぎ壁になる光景だった。本来ならばトラウマとなるだろうその光景に、彼女は眼を見開いて驚いた。溢れんばかりに出ていた涙も、その瞬間に止まってしまった。人間らに力を与え蘇らせているのが、自らを抱きかかえている青年の力だと分かったからである。
それまでの平和な生活では見ることの出来なかった光景に、彼女は心を惹かれてしまったのだ。
その力を得たい。
火から逃れる最中、まだネクロマンサーという職業名も知らぬ頃、ペルラはそう心に決めたのである。
そんな彼女が目にしたのは、青年の胸に輝く一つの紋章だ。花の模様があしらわれているそれは、煌々と照りつける火の元で何事もないかのように輝いている。それがペルラには、とても美しく思えた。
のちに孤児院へと入ったペルラは、そこで出会った大人に紋章に描かれていた花がガザニアであること、そして、その紋章は一部のネクロマンサーが身につけているものだと教わった。
ネクロマンサーを志すのはやめた方がいい、危ないものだと諭され続けてもなお憧れを抱き続けた彼女は、彼らと同じ道を歩むことを夢見て孤児院を出るのであった。
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