第49話 戦時下
「そうなんだ……ってか戦場! うちの家族で戦争に行ってる人いたの! 」
「??? そうだよ? なんで? ……」
ぎょっとする圭人にきょとんとするイナミ。
圭人は驚きを隠せない顔でぼやく。
「いや家族が戦争に行ってるって言っても何か実感がわかないっていうか……」
「ケートの国では戦争は起きてないの? 」
「ここ70年程起きていない」
それを聞いてぽんっと手を打つイナミ。
「……そう言えばお姉ちゃんが戦争に行くときにラゴさんが不思議そうにしてたね。『そんなにあっさり行かせるのか』って……」
「そりゃそうだよ。俺の国じゃ戦争なんてしないようにするのが一番だから」
何となく居心地悪そうに応える圭人。
だが、他のメンバーは困った顔をするので日本の事情を説明する。
すると、みんなも納得したようでイシュタが説明をしてくれた。
「カルチャーショックというやつですね。どこの家でも最低一人は戦争に行ってますよ? 家格や税金の問題もありますし……」
「そうなんだ……家格とか税金って言うのは? 」
「優遇措置です。家と個人には1~9の等級が付いていて、公共への奉仕度で税金とか待遇で優遇されるんです」
「そうなんだ……」
「1~3は偉い人やお金持ちで4~6は平民、7~9は問題のある人です」
「……なるほど。ようするに公共奉仕として兵員募集に行くのが一番手っ取り早い優遇を受ける方法ってことか」
「そういうことです。しっかし……それだと家の中が荒れませんか? 」
「……なんで? 」
「どこの家も暴力的な人や家事も仕事しない人、トラブルを起こす人を真っ先に兵隊に送り付けるので平和なんです。そういう人が戻ってくるとトラブルが起きやすくなりますので……」
「……何事も良し悪しか……」
苦い顔になる圭人。
日本でのニート問題が頭をよぎったからだ。
ご近所トラブルなどもそういった問題の一環だろう。
「多少高齢でも問題がある人物は戦時下の非戦闘従事者へと送られるますので、家庭内が平和にするためにもあった方が良いんです」
「それはまた……」
日本では考えられない事だろう。
だが、この世界の問題児は家庭であっても法的に追い出すことが出来る。
それ故にタマノのような問題児も家に関してだけは真面目なのだ。
「ちなみにイナミの姉ちゃんはどっち? 」
「どちらかと言うと問題児。あの人のせいでビート学園には行けなかったから」
「……なんで? 」
「お姉ちゃんは問題ばかり起こしてたから……」
「……それはタマノ姉ぇも同じだろ」
圭人が不思議そうな顔をする。
「俺がこっち来てから何回暴力事件起こしたんだよ……」
何度かチチリさんが迎えに行くのを見たことがあるので覚えていた圭人。
だが、イナミはかぶりを振る。
「お姉ちゃんの問題は警察沙汰にならないけど、質の悪い内容だから……行ったら絶対に虐められるから……」
「いや……まあ……うん……」
イナミにそう言われて押し黙る圭人。
(結局こっちでも虐められてるのにそれでも嫌ってことか……)
言外の意味に気付いて思案する圭人。
(いったい、どんなことやったんだろ……)
ちょっとだけ興味が出た圭人。
空気が悪くなったところでハーマが咳払いをした。
「さて、そろそろお勉強をした方がいいのではないか諸君? 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます