第45話 放課後は変わらない


 ビリヤードほどの高さの台の上で同じくビリヤードのキューを持ってボールを打ち合うティカとイナミが居た。「バーミリオン」というゲームで相手陣の穴にボールを落とせば勝ちである。

 ティカの得意なゲームでいつも勝っている。


「あ~ミスった……」


 イナミがぼやく。うち損ねた球がコロコロと真ん中を超える。

 両端からしか打ってはならないので玉が真ん中にあると打ちにくくなるのだ。

 ゆっくりと近づく玉をティカが力いっぱい打つとあっさり玉は穴に入り、ゲームセット。


「あ~! 今日こそ勝てると思ったのに! 」


 イナミの悔しそうな顔に対して無表情ながらも得意満面のティカ。

 ほかのメンバーはと言えば・・・


「うぅ~。なんか取れません……」


 キャッチャー系ゲームですっからかんになっているイシュタ。


「ねぇ……これから遊びに行かない?」

「お姉さんと夜のお勉強しましょ?」

「すんません! 連れが居るんで!」


 相変わらず逆ナンを受けまくるエルメス。

 そして我らが圭人はと言えば……


「にいちゃんすげぇな……」

「何回回してんだ? 」

「こんなにできるもんなのか? 」


 メダル系ゲームでメダルをわんさか取っている圭人。

 行けるところで取り、負けるところは逃げる戦法で堅実に稼いでいた。

 周りのおっさんが尊敬のまなざしで見ている。

 ケイオン市のゲームセンターは市民の憩いの場になっており、普通におっさんおばちゃんがいる。

 パチンコが無いので必然的にこういう人たちはこっちに集まるのだ。

 ちなみにこちらにのパチンコはあるがあくまでもゲームである。


「いつも通りの光景だねぇ……」

「……そうだね」


 イナミたちがぼやく。


「終わった? 」


 圭人がくるりと振り返る。


「ううう~結局取れませんでした~」


 泣きながら眼鏡の少女がよろよろと近づいてくる。


「ふぅ~……しつこいなぁ……」


 若干いらっと来ているエルメス。


「負けちゃった……」

「勝っちゃった……」


 少し悔しそうなイナミと得意げなティカ。


「じゃあ、帰ろうか」


 メダルを景品に変えに行く圭人。こちらではメダルゲームは景品と変えるぐらいの融通は利く。

 と言ってもカジノ系は別にあるのでわざわざ三店方式で交換するような変な真似はしていない。

 そのおかげでパチンコもあくまでお遊びとして許されるのだ。


「わたしパラプリが欲しい」

「……エルトン」

「私はビラット! 」

「俺が稼いだんだけど? 」


 苦笑しつつも言われたものに変える圭人。

 圭人はコノンというチップス系お菓子に変える。

 メダルを機械に入れてから操作して景品ボタンを入力するとカコンという音がしてお菓子が取り出し口から出てくる。


「わぁーい♪ 」


 嬉しそうに受け取るイナミと笑顔でお菓子を受け取る三人。

 多少、負けが込んだ者は居たものの、それなりに楽しんで帰ろうとする5人。

 そんな時であった。


「ふざけんなぁ! 」


 そんな5人の耳に男の怒声が聞こえた。


「なんだ? 」


 訝し気な圭人とびっくりしてる4人。


「あ! あそこだ! 」


 エルメスが指さした方向をみんなが見る。

 そこには男女10人ぐらいのグループがおり、そのど真ん中に二人の男女が居た。

 一人は野性味溢れる赤髪赤肌の赤人の男で見るからに大柄な体躯の屈強な男だった。

 もう一人はと言えば……


「……アイナさん? 」


 イナミが怪訝そうな顔でつぶやく。

 先ほど学校で出会ったアイナが男女のグループに囲まれていた。


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