第2話 ステータスとスキル

 祭壇がある暗い部屋から、大きな広間へと移動した。

 外はまだ明るいようで昼過ぎといったところだろう。召喚に巻き込まれてしまったのはほぼクラス全員だった。俺は物覚えがいいほうなので顔と名前は一致する。まぁ仲が特別良い友達などいなかったのでいつも一人なのだが。

 ヴィネーが少し席を外し、しばらくすると古いカメラのようなものを持ってきた。


「では、まず皆さんのステータスとスキルを確認させていただきます」


 なんでも対象の人物に使うことで、その人の強さ、保持している特殊な能力を映し出すことができる魔道具だという。前にいた世界でも同じようなものはあったが、対象の魔力量を数値化するだけのものだった。どんな魔法を使えるとか、どんな能力を持っているとか、そんなことはわからなかったので、実に興味深いアイテムだといえる。

 クラスの中心人物である飛騨、桜田、東雲は測定の順番を相談しているようである。クラスの人数は40名。結局、順番を一々考えるのはめんどうだったらしく、出席番号順となった。


「順番が決まりましたら魔道具の前に立ってください!」


 まず一人目は伊藤という男子生徒だ。茶色みがかった髪と小麦色の肌をしている。いわゆるさわやか系スポーツ男子だ。


「お願いします」


 伊藤が丁寧に挨拶したのち、パシャっとシャッターが押される。

 すると、ジーーーという音がして1枚の紙が出てきた。


 伊藤スザク

  ■称号

   ・異世界の勇者

  ■ステータス

   ・レベル:1

   ・体力 :293

   ・MP  :173

   ・攻撃 :298

   ・防御 :245

   ・素早さ:280

   ・魔力 :106

  ■スキル

   ・闘神スキルLv1

   ・神速スキルLv1


 おおっ! とヴィネーが声を上げた。


「これは素晴らしい! スキル自体もかなり珍しいものですね! さらに二つも持っているのはレアなケースですよ! 各種ステータスもバランスよく、将来有望間違いなしです!」

「……ま、まぁオレは日頃運動しているからな」


 伊藤はすこし戸惑いながらも悪い感じはしてないようだ。

 まだ一人目ということでいまいち実感が湧かないが、この世界の平均と比べると大幅に伊藤は強いらしい。また、レベルが上がればステータスも上昇しさらに強くなっていくのだという。同年代の人のステータスは大体20~30程度だそうで、レベルも10とかそのぐらいになるそうだ。そういわれると何も成長していない段階で数値上10倍~15倍は強い状態である。チート以外の何物でもない。加えてスキルによって様々な効果が上乗せされることで、とんでもない力が発揮されるのだそうだ。異世界から召喚された勇者の特徴らしい。

 シャッターを押すだけなのでサクサクと測定が終わった。みんなが自分のステータスを確認し、「これっていいのかな?」「お、これ強そう!」等々、無理やり連れてこられたことも忘れるように見入っていた。大体ステータスは100前後が多いようで、伊藤と比べると低いように感じる。ただ、レベル1の状態でも破格の力であるらしくヴィネーは終始ご満悦の様子だった。

 中でも飛騨、桜田、東雲は伊藤と同じく、べた褒めの状態。ステータスもさることながらスキルにとても珍しいものがついていたそうだ。


 飛騨卓

  ■称号

   ・異世界の勇者

  ■ステータス

   ・レベル:1

   ・体力 :300

   ・MP  :300

   ・攻撃 :300

   ・防御 :300

   ・素早さ:300

   ・魔力 :300

  ■スキル

   ・光炎

   ・剣技スキルLv1

   ・ラーの加護


 桜田桃

  ■称号

   ・異世界の勇者

  ■ステータス

   ・レベル:1

   ・体力 :160

   ・MP  :298

   ・攻撃 :130

   ・防御 :128

   ・素早さ:242

   ・魔力 :288

  ■スキル

   ・補助スキルLv1

   ・回復スキルLv1

   ・ハトホルの加護


 東雲梓

  ■称号

   ・異世界の勇者

  ■ステータス

   ・レベル:1

   ・体力 :200

   ・MP  :273

   ・攻撃 :217

   ・防御 :237

   ・素早さ:268

   ・魔力 :288

  ■スキル

   ・魔法スキルLv1

    ⇒全属性(地、水、火、風、雷、光、闇)

   ・補助スキルLv1

   ・イシスの加護


 飛騨はクラスの中でもステータスがずば抜けて高く、剣技スキルというものがある。前衛で戦うような構成みたいだ。桜田は派手な格好にもかかわらず回復や補助が目立った。ゲームとかでいうところの僧侶なのだろう。似合っていない。東雲は全属性の魔法を使えるというスキルがあった。何それ欲しい……。加えてこの3人には加護というものがあった。


「俺も桜田、東雲と同じでなんとかの加護っていうのがついてるな」

「ラッキー! 飛騨とおそろじゃん」

「飛騨君のラーっていうのはエジプトの神様だったかしら? 私のイシスも確かそうだったはず」

「えー私のハトホルは違うのー? 」

「いえ、私もそんなに詳しいわけではないからハトホルもそうなのかもしれないわ」


 確かに東雲が言う通りあの3人のスキルについている加護はエジプトの神様の名前だ。ラーは太陽神、ハトホルは愛と美と豊穣と幸運の女神、イシスは魔法の女神とかだったはず。俺もそんなに詳しいわけではない。ただ、神様の名前と聞いたヴィネーはより一層興味が湧いたようだ。


「……まさか神様の名前に関するスキルなんて初耳です。どんな効果があるのかは今後判明していくと思うので、期待していますよ!」


 ほくほくした顔でヴィネーは今後の方針について説明する。

 勇者たちが強いとはいえすぐに実践に移すことしないみたいだ。ひとまず、城内での訓練として、初歩的な立ち回りや一般常識を学ぶ。その後、兵士との模擬戦で応用力を磨く。最終的には城下町のはずれにあるダンジョンで実戦をする予定らしい。そのうえで、どうしても実戦まで行うことができない場合には遠慮なく相談してほしいということを一言付け加える。実にできている人間だ。


「では今日はみなさんのご健勝とますますのご活躍をお祈りまして祝賀会を開催させていただきます! 気のすむまでご堪能ください!」

 

 少しヴィネーの口車に乗せられている気もするが、なんとなく誠意みたいなものが感じとれた。人を使い潰すとか、そんな気概は見られない。ステータスが多少低くても分け隔てなく接する女神のような人だなと思った。

 ちなみにヴィネーにみせた俺のステータスはこのように書かれていた。


 如月潤

  ■称号

   ・落ちこぼれの魔法使い

  ■ステータス

   ・レベル:1

   ・体力 :80

   ・MP  :1

   ・攻撃 :70

   ・防御 :37

   ・素早さ:95

   ・魔力 :101

  ■スキル

   ・バリア

   ・魔力操作


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