第14話 タバコミュニケーション
私は10年喫煙し、その後タバコをやめて10年経ちました。
タバコを吸いはじめて数年間は
「やめなければいけない」
っとどこかで思いながら吸っていましたが、禁煙失敗を重ね、いつしか頭の中のリトルたっくん達の中では、禁煙は禁句になっていきました。
そして、タバコは体に悪いとかの情報に関しては一切聞かない様に行動する様になりました。そして、禁煙席を嫌い、飲み会の席では端っこの方の喫煙者テーブルばかりに座り、喫煙者との会話ばかりを好む様になり、さらにディープな喫煙者となって行きました。
非喫煙者となって思うことは、喫煙者の頃は周りとのコミュニケーションを取ることが比較的楽だったと思います。
みんなで会話してて、途中で会話が止まったりする「沈黙状態」になった時に、喫煙者の頃はタバコを吸いにその席を離れたり出来ました。その席でタバコが吸えた場合も、火を付ける動作や、周りに気を使っているフリで少し離れて、間を取ることが出来ました。
また、社会人になって、喫煙室で日頃あまり会わない方とお会いしたり、お話をするチャンスが生まれる事に関しては、私は勝手にタバコミュニケーションと名付けていました。
ターゲットが入る瞬間を狙って喫煙室に行ったりして、タバコミュニケーションを取っていました。
特に火の貸し借りに関しては、見知らぬ人と触れ合う絶好の機会であり、Zippoをきっかけに話を始められたり、タバコは、そういったコミュニケーションツールとしての効果に関しては絶大でした。
喫煙室という密室で、上司がくわえたらさっと火をつけるだけで気が利くやつだと思われたり、週末の競馬の話なんてすれば、「今度飲みに行こうか?」等と言われたり、かわいい部下としての地位を築けていました。
非喫煙者になりたての頃は、この様な「簡単なポイントの稼ぎ方」が分からず悩む日々でした。
また、喫煙室は吸い終われば退出出来るし、話が続くようであればもう一本吸えばいいという、その場を離れる理由も、その場に滞在し続ける理由も簡単に作ることが出来る魅惑の場所でした。
さらに、当時は上司は大体吸っていたので、上司にあえて時間を取って頂かなくても相談できる時間は比較的簡単に作れましたし、密室という閉鎖空間の中で密談もし易かった時代でした。
このタバコミュニケーションによって、楽をしてきた私は、非喫煙者になりたての頃はコミュニケーションには悩みました。タバコミュニケーションが出来ないことで、仕事場でも席の近くの人としか話はしなくなったし、密室での密談も無くなりました。
しかも非喫煙者としての振る舞いを知らない私は、密談も無くなり、上司に忖度をするための情報収集も出来なくなり、なんとなく今までとは仕事のやり方が変わってしまった様なモヤモヤした気持ちにもなりました。
そして、会社の自分とプライベートの自分とを区別するようになっていきました。
喫煙者のコミュニティと非喫煙者のコミュニティ、この違った世界の間で途方に暮れていた、非喫煙者になりたての頃はそんな時代でした。
話を戻しますと、リトルたっくん達の中で禁煙を話題にし始めたのは、家庭を持った頃でした。
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