二の一
激闘から数日。
突如としてあいた体育館の大穴は、けっきょく隕石の落下によるものだと結論づけられた。
大学だとか、どこそこの研究所だとかいうところの教授とか研究員などが呼ばれることもなく、たいした調査もおこなわれないままに、じつにすみやかに修理作業に入った。
本格的な修築は学校が夏休みに入ってから行うことで、地元の工務店の人々の尽力により応急修理が数日で終わり、今ではもう、体育の授業や部活動に使われている。
テレビでも新聞でも、隕石の落下は報道された。学校の体育館に隕石が落ちたなどという前代未聞の事故(災害?)ということもあり、数日間は、記者やテレビスタッフの姿を見かけたが、こちらももう今では見かけなくなった。
その時の報道では、
――幸いにも、当時は体育館に生徒はおらず、云々。
と学校から発表された、などとあり、藤林あぐりは、
――都合の悪いこと、もみ消した!?
と驚愕すると同時に、大人の世界の裏側を垣間みた思いだった。
そのもみ消された数名の男子生徒たちは、なんと、翌日には全員登校してきた。
その日の朝、――というのは、カシンと戦った翌日の話なのだが、あぐりといっしょに登校した
紫の突然のすっとんきょうな行動にはいつも驚かされるが、今回も内心、冷や汗もので彼女を見つめるあぐりだった。
毎日の日課のようにケンカしている相手と平然と会話できるなんて、自分の友達に対して、畏怖と同時にちょっぴりの尊敬を感じざるをえない。
でも、その席の子には、はなはだしい迷惑をかけてるぞ、とあぐりは心のなかでツッコむ。
「おめえら、なに平然とでてきてんだ」
いきなり切り口上の紫に、不良のひとりが、
「あん、真面目に学校くるのに、なんでテメエにおうかがいをたてなきゃなんねぇんだよ」
たじろぐことなく、応戦する。
「昨日、あんなことしといて、よく出てこれたもんだな、って言ってんだよ」
「昨日?クソオタいびったくらいで、おじけるわけねえだろ」
「?」
紫の頭のうえに、はてなマークが浮かぶ。
話がかみ合っていない。
「すっとぼけてんじゃねぇ、お前ら、体育館でなにやったか、覚えてねえのか?」
「「「? ? ?」」」
紫の問いに、今度は、不良たちの頭の上にはてなマーク。
「体育館なんて、行ってねえよ」
「なんだと?」
「なんだとは、なんだ」
「じゃあ、昨日の放課後は何してたよ」
「ああ?保健室のことか?」
「保健室?」
「なんか、気がついたら、保健室で寝てたな、オレら」
ひとりの言葉に、他のふたりが同意のうなずきをする。
「オレら、体育館の隕石の影響で倒れて、保健に運ばれたのかな」
「え、なんか、マジやばくね、それ」
「放射線とか、なんかありそじゃね」
紫を無視するように、話はじめた不良たちを尻目に、紫は席へと向かった。
「なんか、覚えてねえみたいだぞ、あいつら」
席につくなり、あぐりに声をかける。
「うん、アオイさんも、覚えてないだろうとは、言ってたよ」
「ホントにそうかなぁ?」
数瞬考えるような顔をした紫、直後に吐いた言葉は、
「お前、ちょっとオタトリオに聞いてこいよ」
「なんですと!?」
あぐり、戸惑わざるをえない。
しばし、沈黙。
ユカちゃん、ほれ、ほれ、とアゴをしゃくってる。
――んもう、しかたないなぁ。
ためいきまじりに立ち上がり、あぐりは、オタクたちのところへ歩を進める。
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