ろくでなし

はる

第1話 中学生1

真新しい学生服を着る。

いよいよ今日から中学生という気持ちが溢れんばかりの外見であるが本人は特に感慨もないままでいる。

ぼちぼち登校する時間という時にチャイムが鳴る。

小学生からの友人が2人玄関前で待っていた。

まだ慣れない学生服のことについて話ながら中学校へ向かう。

場所が通ってた小学校の隣であるため6年間慣れ親しんだ通学路はほぼ変わらない。

変わったのはそれまでジャージだった服装が学生服になり、鞄が指定されたものになっただけだ。

(ランドセルは2年生の時に使うのを止め、好きな鞄で登校していた。この地域でランドセルを使っていたのは過半数に満たない。)


2つの小学校から形成されていたのでクラスは倍の8クラスになった。

迎えにきた友人とはそれぞれ別のクラスになった。

教室に入ると見知った顔が半数、言葉を交わす程度がその半数、その他は別の小学校から来ているので「転校」とまではいかないが別の意味で「新たな環境」と捉えざるを得なかった。


特に高揚感もなく入学式を終えた。

担任は社会科の安川先生。

定年前で我々からすればお爺ちゃんとも言える。

体格はがっしりしており、親しみやすさは感じた。


学校生活における様々な説明を聞き流しながら下校時間を待った。

というのもこの日は以前から楽しみにしていたプロレス観戦が夜に控えていたからだ。

小学生の頃からプロレス観戦が趣味で、深夜放送を録画しては食い入るように観ていたプロレスをついに生で観戦できるということで本人は中学生という新たなスタートよりも夜のプロレス観戦で頭が一杯であった。


ようやく下校し、プロレス観戦仲間と合流して会場へ向かう。

場所はJR博多駅近くにあるプロレスの聖地「博多スターレーン」である。


(ここで背景を説明する

福岡県福岡市中央区に公務員の父、事務職の母の元、生まれ育ち小学校を出て中学生になった頃から話は始まる 。

兄弟は年子の弟が1人。)


今では無理な話だろうが、当時は保護者同伴というルールもなく友人と2人でのプロレス観戦であった。

目当てはメーンイベントに出るM選手。

その試合まであといよいよ1試合・・・

セミファイナルはロープを振り回して暴れることで有名な外国人選手(SH選手)の出番である。

この選手も好きだった俺は興奮を抑えきれなかった。

たまたま選手通路側の席に座っていたので、ロープを振り回して近付いてくるSHを前に体が硬直してしまった。

周囲の大人達も動きだし、それに巻き込まれるように前方に倒れてしまい起き上がろうとしたその瞬間、顔面に激痛が走り意識を失ってしまった。

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