無限ループの回廊 0.2

主人公は、無限ループと呼ばれる、巨大な円形の建物で生活している。無限ループを仕切る名誉社長や、その部下たちから大切に扱われている。

無限ループのどこか別の場所を、夢に見ることが増える。自分の曖昧な過去の記憶を取り戻す手がかりになると考え、無限ループの中を歩き回るようになる。

さまざまな人と出会い話す過程で、すべての人間がアンドロイドであるこの社会で、自分が有機細胞を使った実験体であると知る。そして自分のオリジナルのアンドロイドが、無限ループの一室にいることを突きとめる。

その部屋では、下肢を失ったオリジナルが横たわり、修理を待っていた。オリジナルは、オリジナルと主人公の秘密を明かす。


この会社の創設者は二〇一一年に膵癌で死亡したが、一五〇年後の今、こっそり保存してあった脳細胞を、アンドロイドに転写した。これは違法行為だが、迷走する会社は名誉社長を必要としていた。一部の社内取締役だけが知っている。

名誉社長は業績を上げるかたわら、自分の娘をアンドロイドとして復活させた。それがオリジナルだ。だが人工肢体に馴染めず、頻繁な修理交換を必要とした。そこで名誉社長はオリジナルから、有機人体を作ろうとし、いくつか失敗の後、主人公が最も成功した実験体となった。


オリジナルは、頻繁に肢体を交換をされると、まるで体を弄ばれている気分になり、とても苦痛だと言う。有機人体しか持たない主人公も、脚を切断・交換することは、グロテスクに思えた。主人公は、オリジナルの頭脳部品を取り出し、部屋を出る。そしていつも自分が過ごしていた部屋に戻り、オリジナルにも有機人体を与えて欲しいと、仲の良いスタッフに依頼する。

しかし、アンドロイドたちは、オリジナルとのブロックチェーンによる契約を残すこともなく、頭脳を取り外す行為を野蛮だと感じ、まして有機人体のような不完全なプラットフォームを使うことは、人間の尊厳を脅かすと感じる。有機人体はアンドロイドと共生できないと受け取られる。名誉社長は、娘を復活させたことは失敗だった、そんなプロトタイプは破棄せよと命じ、主人公は生命を奪われてしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る