おいでませ魔物ランド!:異世界にテーマパークを建てる話

@nutsnut

プロローグ

「というわけで!作りましょう!!テーマパーク!!!」


時刻は昼を少し回った頃。

暖かな日差しが差しこむ王宮に、彼女の声は大きく響き渡った。

どよめく兵には目もくれず、彼女は目の前の上司、一国の王をまっすぐな瞳で見つめていた。


「魔王軍と人間達が平和協定を結んでたしかに平和にはなりましたけど、いまだに我ら魔物達と人間達との間にはいざこざが耐えません!お手元の資料2ページをご覧いただければ、それがいかに深刻であるかをお分かりいただけるかと思います!!」

「あ……ああ……そうか……。」

「魔物、人間、それぞれランダムに選んだ700名ずつにアンケートをとった結果、私たちの間にはかなりの誤解と偏見が蔓延っていることが分かりました!アンケート結果につきましては3、4ページに記載がございますのでご覧ください!」

「な……なるほど……。」

「ここまで誤解と偏見があるのは、お互いに理解が足りないせいだと私は考えました!実際、魔物の学校では人間のことを長年敵だと教えておりましたし、人間側も同じことをしていたそうです!」

「ああ……。」

「そこで何か良い案はないかと考えていたところ!異世界には「テーマパーク」なるものがあると聞きました!テーマパークは人々を楽しませ喜ばせおもてなしする夢の王国なのだそうです!!魔物の特性を存分に生かしたパークを建設して人間たちに遊びに来てもらえたら、きっと私たち、仲良くなれると思うんです!!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


途切れることなく言葉を発射し続ける彼女を、王は慌てて制止した。

彼女はといえば、辞書ほどもありそうな書類を追加で2束出そうとしたまま、そのポーズできょとんと固まっている。


「分かった!てえまぱあく?なるものを作りたいという熱い気持ちはよく分かった!資料は後でちゃんと読んでおくから、とりあえず企画書や経営計画書などを提出してくれ!」

「了解しました!それではまず……」


王は青ざめた。兵も青ざめた。

かつて、ここまで大量の資料や書類を提出した部下がいただろうか。

戦時中ですらいなかったはずだ。

内部拡張と軽量化の魔法をかけたかばんからは、次から次へと資料が飛び出してくる。

テーマパークの歴史をまとめた本、2冊に分厚く分かれた経営計画書、テーマパーク運用計画書、スタッフ育成計画書、季節ごとのイベント計画、異世界に存在する参考となりそうなテーマパークの資料、資料、資料……


「分かった!もう分かった!!お前の熱意と根気と本気度合いはとてもよく分かった!!!金は出す!!!だからもう許してくれ!!!!!」


こうして、この世界初となる「魔物テーマパーク計画」が始まったのであった。

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