第6話◇詩穂からのメール③◇
◇慶ちゃん、心配かけてごめんね。
倒れたといっても病院の待合室だったし、
今はこうして良くなっているからね。
この症状は前にもあったから、診察待ちの待合室で暑いなぁと、汗がじわじわと出てきた時、これはマズイかも……と思ったんだよね。
だから、持参のペットボトルのお茶を少しずつ飲むようにしていたんだけど。
そのうちに下腹に筋肉痛みたいな違和感がきて(これはわたしが脱水症状を起こしつつある時の信号みたいなもの)吐き気と目の前がチカチカしてきたら限界で。
通りがかった看護師さんにSOSしたの。
その頃には水浴びしたような汗で全身、髪までもぐっしょりなってて。
看護師さんに驚かれてしまった。
何度なっても、この状態はきついよ。
血圧はショック状態によるのか、上60に下30とかまで下がってて、慌てて心電図とられた。
点滴の針さえ、ぐったりしているわたしは、いつ針を入れられたかもわからない。
こうなるとなんていうか、意識がぼんやりしてきて。暫く、うつらうつらとしていたよ。
不思議なのは、一番しんどい時を抜け出すと服を絞れるほどだったのが嘘みたいに、汗がひいていくこと。
脱水症状って本当に気をつけないといけないね。
わたしは精神的に痛みやキツさを意識すると、神経性のショック症状を起こして脱水症状を起こしやすい。
マンモグラフィの検査の時みたいな感じね。
後は暖房。空気が重くなるというか、暖房の暑さがとにかく苦手で。
情けないよ。
どれだけ、ポンコツで弱いんだって話。
それでも血圧も正常値に戻って、心電図にも異常なかったから、そのまま、持病の診察をしてもらって、後はいつも通りに、点滴が終わった頃に帰ることができたよ。
ちょうど慶ちゃんが電話をくれたのが、治った後で良かった。
それでもびっくりさせてしまったけど。
でもこういうことだからね。
大丈夫。
わたしは意外にしぶといからね。
もう大丈夫だよ!
§
*詩穂の独り言*
正直、ああ、慶ちゃんに逢えないまま、これでおしまいになっちゃうのかなって思ったりもした。
大袈裟かもしれないけど、地の底に沈んでいくような気分の悪さと、絶え間ない吐き気、目眩とチカチカで意識を何度も手放しそうになった。
怖かった。
でも、結局、最期ってこういうものなんだろうな。苦しみとか痛み的なモノの程度の違いはあるにしても。
そんなことを考えたりした。
わたしがそうなっても、慶ちゃんが、どんなに急いで来ようとしても、間に合うことはないだろうということも。
わたしたちの物理的な距離のことを。
覚悟は必要だろう。
わかっているのにね、
そんなことを考えたりしたよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます