06 嗤う月の迷宮



 欠けた月が嗤う

 私を見下ろして

 滑稽な道化の星達と共に

 嗤い続ける


 私は 道の中 立ち尽くして嘆く

 帰れない

 帰れない

 ……ああ、どうやっても どうしても


「家へ帰る方法が 思い出せないの」


 迷い込んだ道の先

 出会ったのは嘲笑う 道化


「助けて」

「助けて」


 声かけても 手をとってもらえない


 振りむいた先 視線のその先に

 追いついた 追いつかれた

 悪夢の主が一匹


「さあ」


 嗤う


 まわる まわる 巡る 巡る

 迷宮は リセットされ

 何度も やりなおし 

 何度も くりかえし

 初めから どこかから

 思い出す事 できないくらい


「もう 何が何やら分からない」


 考える事をやめて

 悩む事もやめて


 再び会った道化

 

「契約しましょう?」


 今度は手を掴んで

 耳元で囁かれた

 その提案は……



(最初の様に、まだ何も知らない迷子だったならば)

(私はきっとまだ救われたでしょ)

(けれど私はそれに取り込まれてしまった)

(それの名前はリセット)

(業から始まり、人を、世界を残さず消しつくす現象)



 欠けた月が嗤う

 私を見下ろして

 滑稽な道化の星達と共に嗤う


 私は 道の真ん中で 立ち尽くして嘆く

 帰れない

 帰れない

 ……ああ、どうやっても


 私は嗤いながら 


「家へ帰る方法が 思い出せないわ!」


 今日も誰かが彷徨い訪れるのを待ちわび続けるの……


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