03 -ある愛の終わりに-



 決して交わる事のない二者。

 隣り合う事が許されない二つの世界


 不可能世界。


 彼は彼女に恋をして、そして彼女もまた彼を愛していた。


 けれど、二人は致命的に、決定的に、断絶された世界の住人だった。


 死者は生者に語りかけられないように、生者が死者と時を歩めないように。


 彼は世界よりも彼女を愛していた。

 世界が彼女を殺すと言うのなら、世界よりも彼女を選ぶつもりでいた。


 彼女もまた世界よりも彼を好いていた。

 世界が彼を殺すと言うのなら、世界よりも彼を選ぶつもりでいた。


 相思相愛。

 けれど有限なり。


 時に流れがあるように、距離に隔たりがあるように、人の愛情にも限りがある。


 変わりゆく世界に、思い変わらぬ保証は、どこにもない。


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