267 砂漠寄りの大通りにて

 村の中央広場から、砂漠寄りのエリアへと続く大通りには、さまざまな衣服を売る店が立ち並ぶ一角があった。


 村特産の生地でつくった服を取り扱う店から、腕や足、胴体につける装備品、また、どこか分からない異国の服を取り扱う店まで……一角といえども、その数は十数店舗に及んでいる。


 お昼頃、マナトはその一角を訪れていた。


 メロ共和国への交易の予定が一日遅れるということで、予定が一日空いてしまった。


 そこで、交易へと向かう際に着用するマントやくたびれてきていたため、そろそろ新調しようと思い立ったのだ。


 「おっ、ここか」


 マントや外行きの外装などが売られているお店を見つけ、扉を開けた。


 「あら、マナトくん」


 中に入ると、ステラがいた。


 「あぁ、ステラさん。昨夜はお疲れさまでした」

 「いえいえ。ロアスパインリザードの襲撃で、大変なことになっちゃったね」


 ステラも昨夜、岩石の村の護衛達が担ぎ込まれた際、薬を運んだり、あれこれと動いてくれていた。


 「交易も、明日になったんでしょ?」

 「はい」


 少し話して、マナトは新たに、ベージュのマントを購入した。


 ステラは外行き用の、白い装束を購入していた。姉のセラ用にとのことだ。


 2人で店をあとにした。


 歩きながら、ステラはマナトに言った。


 「コスナちゃん、いまはマナトくんちで、おねんね中?」

 「そうですね」


 マナトが交易で不在のとき、コスナの世話はステラに頼んでいた。


 「ステラさん、また、今回も、お手数なんですけど、よろしくお願いします」


 マナトはステラに、頭を下げた。


 「ぜんぜん、大丈夫よ~。コスナちゃんね、この前ね、私が座ってたら、にゃっにゃって、膝の上に乗ってきたの」

 「もう、完全にステラさんに懐いてますね」

 「もう、ホントにかわくてね~……」


 ステラとマナトは話しながら、大通りへ出た。


 「それでね……あっ」


 大通りへ出ると同時に、ステラはなにかに気づいて、話すを止めた。


 「ラクトじゃ……」


 ステラが言いかけた、その時、


 「!?」

 「……ステラ、さん?」

 「ま、マナトくん、こっち!」

 「えっ?あっ、ちょっと!?」


 マナトはステラに手を引かれ、出てきた建物の角に隠れた。


 「ステラさん?」

 「ちょっと、ちょっとちょっと!あれ見て……!」


 ステラにつられて、マナトは建物の角からこっそり大通りを眺めた。


 大通りを、ラクトが歩いていた。


 その隣に、ラクトと同じ背の高さの、気品のある、長い金髪の美女。


 薄い紫色の、ワンピース風の服を着て、歩くたびにヒラヒラとスカートが揺れていた。


 驚いているのは、ステラだけではなかった。


 「……えっ!?」

 「誰!?」

 「すげえ美人……」


 道行く村人達も、男女問わず立ち止まり、驚いた表情で振り返る。そして、ラクトと隣を歩く美女に目線を送っている。


 「えっ、なにが起きてるのってゆうか誰!?ラクトが?えっ!?なに、蜃気楼!?いや、てゆうか……あの、あのラクトに、ここ、こここここ!」

 「す、ステラさん、落ち着いて……」

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