228 論功行賞①
手前には10段ほどの階段が設けられていて、正面から見ると、先の尖った半球のかたちをした、大きな真っ白い丸屋根が5つ、下はアーチ状の窓が並んでおり、見るもきらびやかな景観。
公宮が立ち並ぶ、メロ共和国の中央部エリアに設けられているこの宮殿で、この度のワイルドグリフィン撃退における功績を称える、論功行賞が行われる。
「フィ、フィオナさん、これ、変じゃないですか?」
しきりと、ウテナがフィオナに聞いている。顔には、ほんのりと薄化粧が施されている。
「ウフフッ、よく似合ってるわ、素敵よ、ウテナ」
ウテナは社交用の、青いエキゾチックドレスを着用していた。
胸当ては横から巻きかけるもので、小麦色の肩がむき出しになっている。その上から、薄い青透明な肩掛けを羽織っていた。
腰から下は履くタイプの、足首まであるゆったりとしたパンツに、歩いたときにフワッと後を引く透明ななびきスカーフがつけられている。
そして、カチューシャに挟んだヘッドドレスが、頭上からゆらゆら揺らめいていた。
「こんな服、着たことないんだものぉ……」
「いよっ!今日の主役~」
ライラが陽気に言った。
ウテナだけでなく、ライラやフィオナ、また、他のサロンの女子の面々も、各々、ドレスを着用していた。
女性陣は皆、キャラバン側も護衛側も関係なく、気合いが入っている。
「今日、ルナも来れればよかったんだけどなぁ」
フェンが言った。彼は彼で、紫と黒と白の、騎士風の衣装に身をまとっている。
「あらっ、おそらく彼女は、公爵令嬢として、私たちを出迎える側にいると思うわ」
「あっ、なるほど」
フィオナの言葉に、フェンは納得した。
「……」
ウテナは無言になった。
実は、ウテナとフィオナは、ワイルドグリフィン以来、ルナの住む公宮へと毎日、足を運んでいた。
その時に出迎えてくれる、彼女の召し使いから聞くところによれば、彼女自身は快方へ向かっているとのことだった。
ただ、会うことはできないとのことだった。
実際、公務に復帰して忙しいのかもしれない。
それこそ、フィオナが言った通り、宮殿の中にルナの姿があることは、可能性としてはあった。
「まったく、お前ら、外面を意識し過ぎだぜ」
ライラの隣にいたオルハンが、口を開いた。
「いや、アンタはむしろ……はぁ」
ライラは言いかけると、ため息をついた。
オルハンだけ唯一、いつも通りの服装。公的な場所で着飾るということを知らないようだ。
「ちょっと、同じサロンメンバーって思われたくないから、ちょっと、離れなさいよ」
「はあ!?なんでだよ!」
「なんで分からないのよ!」
ライラとオルハンが言い合ってると、宮殿の正面玄関の大きなアーチ扉が開いた。
公爵の、黒服を着た執事数人が、姿を現した。
「頭上から、失礼します」
執事の一人が一礼すると、中へ入るように促した。
「皆さま、階段を上り、中へお入りくださいませ。右側に2列、キャラバンの皆様、左側に1列でお進みください」
すでにある程度並び合っていたメンバーは、そのまま隊を崩さずに、階段を上り始めた。
「……えっ、これじゃ結局、私オルハンの隣になっちゃうじゃない!」
ライラが階段を上がりながら、叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます