224 街中での攻防戦⑤/ウテナの右拳

 ウテナは素早く横へ幅跳びした。ワイルドグリフィンの滑空突進を回避。


 そのままウテナは軽快にステップを踏み始めた。


 ――ウァガァア!!

 ――ガァッ!!


 横から斜めから、もう2体のワイルドグリフィンがウテナへ交互に飛びかかる。


 右へ、左へ、前へ、後ろへ……ワイルドグリフィンの鉤爪を、余裕を持ってウテナはかわした。


 ウテナのステップがどんどん速くなる。


 「は、速い!」

 「ワイルドグリフィンが追い付いてない……だと!」


 戦いを見ているフェンとオルハンが驚いて言った。


 3体のワイルドグリフィンの波状攻撃を、ことごとくウテナはかわし続ける。


 ――バサバサバサッ!!


 と、ワイルドグリフィンが、3体とも羽ばたいた。


 ウテナはステップを踏むのを止めた。


 「……」


 そして、ナックルダスターの装着した右拳に、力を込めている。


 「ウテナ、殴る気だぜ!」

 「でも、体格差がありすぎる!迎え撃っても、跳ね返されるんじゃないか?」


 ウテナは見た目にも華奢な体格で、多少、筋肉はあるが、いま対峙している相手は、馬やラクダの倍の大きさをしている、ワイルドグリフィン。


 突進をくらえば、ウテナの身体はタダでは済まないことは、見た者なら誰でも思ってしまうような光景だった。


 ――バサッ、バサッ。


 彼女の頭上を、円を描くように、ワイルドグリフィン達は旋回している。


 「これは……」

 「3体同時攻撃じゃ……!」


 ――ウァガァアアアア!!


 ワイルドグリフィンは3方向から、同じタイミングで地上にいるウテナに向かって猛スピードで突撃してきた。


 ――キュッ!


 ウテナの履いている、ブラウン色のショートブーツの底が鳴った。


 3体のうちの1体に狙い定めたウテナは、強く踏み込んで跳躍していた。


 「自ら距離を詰めにいった!?」

 「ぶつかる!!」


 ――ドッ!!!!


 衝撃波が、大通りに伝わる。


 ウテナと交錯したワイルドグリフィンが、再び上空へ上がった。


 しかし、それは自らの力によるものではなく、ウテナによる打撃の衝撃によるものだった。


 ――ドサッ。


 ワイルドグリフィンは力なく落ちると、地に伏した。


 ウテナの右拳の一撃で、完全にのびている。


 鉤爪とクチバシを間一髪でかわし、ウテナの下から上へと振り上げた右拳は、ワイルドグリフィンのクチバシの下を完璧に捉えていた。


 「おぉ!!」

 「やった!!倒した!!」


 建物の中から歓声があがった。


 「す、すげぇ……」

 「僕らの何倍も強いね……」


 オルハンとフェンが、唖然として見ている。


 「ウテナって、あんなに強かったのね……」


 ライラが言うと、フィオナはうなずいた。


 「もともと、強かったんだけどね。グリズリーを一人で倒してしまえるほどにね」

 「もっと、強くなったって、こと?」

 「そう。ウテナは強くなった。ジンと、出会ったことによって、ね」

 「……そっか。あなた達、ジンの遭遇者だったわね」

 「ええ」

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