218 ウテナの一言

 「お疲れさまです」


 ウテナは言いつつ、フィオナの隣に立った。少し物憂げな表情をしている。


 「ウテナ、お疲れさま」

 「ウテナか!ルナと一緒じゃねえのか?ルナはどうした?」


 フェンの声に被さるかたちで、オルハンが言った。


 ルナの、マナの儀式のことは、フィオナとウテナのみ知っていて、サロン内のメンバーには内緒にしていた。


 「ルナは、公爵令嬢としての公務よ」


 ウテナに代わって、フィオナが言った。


 公爵家は国のトップということもあり、その子息にも、他の国のお偉い方との交流などといった公務というものがあり、時折ルナはそっちで動いていることがあった。


 「公務か……」


 こう言っておけば、皆、納得する。


 「それじゃあ、次の僕らの交易の割り振りだけと……」


 フェンが中心となり、中央のテーブルでは交易依頼の紙が広げられ、それぞれの隊の今後の動きについて話が進められた。


 「ルナ、大丈夫だった?」

 「いや、それが……」


 フィオナとウテナは、集会所の端で、コソコソ話を始めた。


 「そうだったのね。マナ焼けねぇ……」

 「はい……」

 「フィオナ~」


 ライラが呼んでいる。


 「あっ、うん、分かってる」


 一度、ウテナとの会話をやめ、フィオナはライラの隣の、空いているイスに座った。


 しばらく、打ち合わせに加わる。


 「おい、フィオナ!」


 打ち合わせが一段落したところで、オルハンが言った。


 「えっ?」

 「さっきの話!ルナのこと!」

 「あぁ、なに、アンタ、納得してないってこと?」

 「当たり前だろ!」


 オルハンとフィオナが言い合っている。それをウテナは、よく分からないといった様子で見ていた。


 「ルナのことって、なんですか?」

 「さっきフィオナと話してたんだよ!まるでルナに、意中の相手でもいるかのような感じに、俺には聞こえたんだが!」

 「意中の相手……マナトさんのことですか?」


 ――し~ん。


 ウテナの言葉に、一瞬、沈黙が流れた。


 あちゃ~と、おでこを押さえる、フィオナ。


 「えっ!?ウソっ!?」


 ライラが興奮して、前のめりになった。


 「マジ!?ルナって、恋人いるの!?えっ、そうなの!?」

 「へぇ~。まあでも、ルナも、年頃の女性だしなぁ」


 フェンが、うんうんと、何度かうなずいている。


 「……」


 オルハンは、黙って下を向いていた。


 「……マナトさん、だと?」


 その時だった。


 ――ビィーーーー!!


 外から、緊急事態を知らせる警報音が鳴り響いた。


 「なにかあったようね」

 「ああ、見てくる!」


 フェンは立ち上がると、素早く扉を開いて外に出た。


 「ヤバい!!こっちに来てるぞ!!」

 「降りてくるぞ!!」

 「に、逃げろ~!!」


 外は騒がしく、人々は国の中央、公宮方面へと避難している様子が見えた。


 フェンはその中の一人に声をかけた。


 「どうした!!」

 「ワイルドグリフィンの群れだ!!もう、そこまで来てる!!」

 「そこまで?国の護衛は気づかなかったのか?」

 「いやそれが、いきなり現れたらしい!!」

 「なに!?」

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