216 フィオナ、サロン内にて①/フェン、ライラ、オルハン
ルナのいた公宮から外に出て、路地を少し歩くと広いエリアに出る。
そのエリアは四角の石で固めて舗装されているが、所々から大きな巨木が顔を出していて、そこはかつて、密林であった名残りが、その巨木から伺い知れた。
だが、そんな大通り沿いをずっと歩いていくと、巨木はなくなって、居住区と市場とが入り交じった、雑多な景観の広がるエリアが姿を現し、一気に生活感が溢れ出ていた。
そんな雑多の景観に埋もれてしまって、気がつかずにスルーしてしまいそうな、大通り沿いの少し奥ばったところに、小さな集会所があった。
集会所内、奥の壁には本棚が設置されていて、中には書物や木片の書簡などが入っている。
部屋の真ん中には皆で会議ができるようにテーブルが2つくっつけられていて、その周りにイスが並んでいる。
扉以外は、小さな窓しかなく、足りない光はテーブルの上のろうそくの灯火で補うといった状態だ。
そして、真ん中のテーブルを囲むようなかたちで、10人ほどのキャラバン達が、輪を作って話をしていた。
「……はい、今回の報酬合計は、こんなところ」
「このまま行けば、サロン中、上位間違いなしよ……!」
「当然!俺がいるからな」
「あのね、オルハン、みんなの手柄よ、ここにいるサロンメンバーみんなの、ね」
キャラバン達は皆、満足そうな顔をしていた。
メロの国では、キャラバン達を複数一組のグループに分けて、それぞれが競い合って活動するような仕組みがあった。
そのグループのことをキャラバンサロン、通称サロンと呼んでいた。
「……そういえば、また、5つの新規サロンが結成されたらしいわ」
「へぇ」
「最近、キャラバン増えたわよね」
「へっ!サロンがどれだけ増えたって、一番はこの俺だ!」
「オルハン……あのね、そういうことを言ってわけじゃないのよ」
オルハンと呼ばれた、自己主張がかなり前のめりな、黒髪で褐色肌の男は、イスから立ち上がり、その大きな茶色の瞳をさらに大きくした。
そして、
――シュルルル……。
オルハンの背後から、水流が出てきた。
「おう、ライラ!どんなヤツだって、この俺の水の能力があればどうってこと……!」
「あ~、ほら、そうやってまた自分が能力者であることをひけらかす。そういうとこ、サブいんだけど」
ライラと呼ばれた、茶褐色の長い髪、白い肌の女が、その三白眼の焦げ茶色の瞳で、オルハンをにらみつけた。
水流が、しなしなとオルハンの背後へと戻った。
「まあ、人気の職業になりつつあるみたいなのは、間違いないと思うけどね~。あんたはどう思うの?フェン」
ライラが問うと、フェンと呼ばれた、黒髪短髪で落ち着いた容姿と濃い緑の瞳の男は、う~んと腕を組み、やがて、答えた。
「キャラバンの報酬が上がったから、かな。でも、それだけじゃない気がして……ちょっと、違和感を感じてる」
「ふ~ん。違和感て?」
「それは、具体的には分からないけど」
このフェン、ライラ、オルハンの3人は、キャラバンの隊長だった。
そして、もう一人。
テーブルを囲んで話しているメンバーの一歩後ろで、イスには座らずに、壁にもたれながら、その光景を見守っていたフィオナに、ライラは振り向いて言った。
「それじゃあ、フィオナは?」
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