48 アクス王国/王宮での交易②

 ケントと王宮商人は顔見知りなようで、少しの間、会話をしていた。


 「……あと、新顔さんですね。どうも」


 王宮商人はマナトへ顔を向けた。


 「あっ、どうも。マナトと申します」

 「では、お2人。交易所へ」


 王宮商人に促され、ケントとマナトは交易所の中に入った。


 壁や床は大理石で、建物内には高貴な雰囲気が漂いつつも、用途としては倉庫のようだ。


 建物の中の半分以上を埋めるように、木製の本棚のような仕切りが設置されていて、そこには木箱が大量に入っている。


 「それでは、生地はこちらの台へ」

 「よし、マナト、ラクダから降ろすか」

 「はい」


 マナトはラクダから、交易品である村特産の生地を取り外し、入口に入ってすぐの台の上に置いていった。


 「いつもながら、いい生地ですね。この光沢と肌触りの感じが、王宮の人達は大好きなんですよ。……じゃあ、私も準備を」


 王宮商人もまた、奥の倉庫から、木箱をいくつか持って来た。


 木箱の中にはそれぞれ、香辛料や岩塩、鉄や黒曜石が入っていた。


 「では、いただきます。ありがとうございます」

 「いえいえ。今後とも、何とぞ。フリード様によろしくお伝え下さい」


 ケントと王宮商人は、握手した。


 「すごい……」


 ラクダに得た品物の木箱をラクダにくくりつけながら、マナトは感動していた。


 商売の原点、物々交換だ。


 ただ、純粋に、お互いが必要としているものを交換する。


 日本で、あれこれ書類をこうしてとか、パソコンでああしてこうしてとか、何だったんだろうと思ってしまうくらい、シンプルなやり取りだ。


 「帰りは、どうされるのですか?」

 王宮商人が、ケントに聞いた。


 「はい。一応、ジンが出現しているというので、早いですが、明日には発とうと思っております」

 「そうですか。道中、くれぐれもお気をつけてください」

 「はい。お気遣い、感謝します」


 王宮での交易を終えたケントとマナトは、新しく得た交易品を取り付けたラクダ達と共に、王宮を出た。


 「王宮での交易は……」


 広場に戻りながら、ケントが言った。


 「村の長老の交易なんだ。それを代役で俺達がやってるって感じなんだ」

 「あぁ、そういう事ですか」

 「まあでも、長老自身というよりは、村のみんなが欲しいものを手に入れるための交易だな。こっちがもらうのは、香辛料や岩塩、また鉄とか黒曜石とか、村の近くでは手に入れられないものという訳だ」

 「なるほど」

 「んじゃ、広場組の合流だな!」

 「はい!」


 広場に戻ると、すでにミトとラクトが準備を済ませていて、お祭りの模擬店のような感じで、生地及び衣服を売り出していた。


 だが……。


 ミトとラクトが仁王立ちで、腕を組んで、もの凄い形相で、客達を睨んでいる。


 もちろん、誰も売り場には寄り付いていない。


 「おう、お前ら、なかなか、いい顔してるぜ」

 ケントが言った。


 ……えっ?

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