36 共行⑥/盗賊団との戦い

 ミトは、2人の敵を相手に交戦し続けていた。


 敵は、少し息が上がってはいるが、傷ついている様子はない。


 対するミトは、ずっと同じ表情だった。グリズリーと戦ったときと、同じ表情をしている。


 「んっ」


 ラクトが、ずっと同じ敵を相手にミトが戦い続けていることに気づいた。


 「おう、ミト。もしかして、苦戦してるのか?」

 「いや?」

 「助けに入ってやろうか」

 「ううん、大丈夫~」


 そして、ミトは敵を見ながら、う~んと少し考える様子で、付け加えた。


 「たぶん、もうすぐ、折れると思うんだよね~」

 「折れる?」


 ラクトは首をかしげた。


 敵の一人が双剣でミトに斬り込む。ミトはサッとよけつつ、敵の双剣をカキン!とはじいた。


 双剣が宙を舞い、地面に落ちる。敵は急いでそれを拾いに走る。


 その間、ミトは追い討ちをかけることなく、ただただ、その光景を見守っていた。


 もう一人、隙をついてミトに剣で突き刺してきた。ミトは分かってますとばかりにスッと身体をのけ反らせ、よけ様に先の敵と同じく、剣を弾き飛ばした。


 敵が、落ちた武器を拾った。


 ――ストン。


 拾ったが、敵が武器から、手を離した。そして、敵は、うなだれるように両膝をついた。


 「もう、あのやり取り、10回以上もやってるんだぜ……」


 ケントが、ミトにというより、どちらかというと敵側のほうに同情しているような感じで、苦笑しながら言った。


 ラクトは察した。


 「なるほどぉ……折るって、敵の心を折ったんだな。……ある意味、一番おっかねえやり方だな」


 まだ戦闘可能な敵は、半分ほど残ってはいた。


 しかし、ミトの戦いを見て、完全に戦意を喪失したらしい。


 実力の差というものが、ミトのやった戦いで、決定的なものとなったようだ。


 「……さて、これ以上やるなら、俺も相手になるが、どうする?盗賊団の皆さんよ」


 ――ジャキッ。


 ケントが、背中の大剣に手をかけ、構えた。


 「ク、クソ……!」


 負傷したメンバーを庇いながら、盗賊団は逃げ出した。


 ウテナがすかさず追い討ちをかけようと、駆け出そうとした。


 「追わなくていいわよ、ウテナ」

 フィオナが言った。


 「えっ?」

 「あたし達は、キャラバンよ。交易品を持って国を行き来する、行商するのが仕事なのよ」

 「はい」


 ウテナはナックルダスターを右手から外した。


 盗賊団は、眼前から消えた。


 「みんな、お疲れ~。んじゃ、行くぞ~」


 ケント商隊とウテナ商隊は、再び西のサライを目指した。何事もなかったかのように、砂漠の道を歩く。


 とはいえ、後ろを歩いていた5人は、それまでのぎこちなさというものはなくなり、快活に会話している様子だった。


 先頭を歩いているフィオナとケントはそれを見て、頷き合った。

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