カトレヤは逆ハーレムを使って世界を変えてしまう!?

赤月なつき(あかつきなつき)

始まりの章 序章 神と魔女

 雲上の椅子に腰掛けている世界の主。神はどんな種族も愛していた。特に天使と魔女を。今日もこの方は腕に足に、天使を掴ませて優雅に微笑んでいた。そこに入ったのは黒と赤をまとった美しき女。その女はこの世界に入るとため息を吐いた。

「主様、また戯れていらっしゃるのですか?」

「戯れとは心外だな、僕は彼らを愛してる最中だよ」

 またもため息が空に放たれた。この世界は青い空と白い雲しか存在しない。椅子も、机も全て雲だ。

「そんなことはどうだっていいのですよ、……報告書です」

 彼女が手渡したのは特殊な紙でできた「罪人の回心度報告書」だ。その名前の通り、死んだ人間がどれくらい、誰が心を正したのかを記したものだ。彼女は地獄の長、これを提出するのも彼女の仕事だ。

「おや……もうそんな時期か。んー……あまり回心した人はいないみたいだね」

「そうですね、心苦しいところですが、仕方がありません。所詮人間ですし」

「……君は本当に人間が嫌いだね」

「そりゃあそうですよ、……こんな傷をつけられちゃ……きゃっ!」

 彼女は突然びっくりして声高い音を発してしまった。

「どこ触ってるんですか!?」

「かっわいい反応〜、これだから悪戯はやめられないよね」

「……」

 彼女は見えない触手?に触られて、驚いてしまったのだ。彼女の体は敏感で繊細でその反応は誰もが見惚れるとか。

「私の用は済みましたので、帰ります」

 そう言って踵を返そうとした。しかし、手を掴まれる。

「待って、君に伝えたいことがあるんだよ」

「……なんです?」

「もうすぐ、あの世界を終わらせようと思うんだよ」

「本当ですか?」

「ああ」

 すると女の顔は少しずつ緩んで、歪んで、とてつもない笑みに変貌した。

「ふふっ……それは……素晴らしいですね……うふふ、」

「怖いなぁ、君は。……だから今のうちから人間界に行って待ってるといいよ」

「そうさせていただきますわね」


 その数日後、神は全ての天使、魔女、悪魔に人間界の崩壊を通達した。そうしてそれに喜んだ彼らは人間界に訪れ、その終末を待ちわびることになった。



 神暦1020年

 暗幕に包まれるのは一人の奴隷。人間に支配され、蹂躙される哀れな娘、けれども彼らは嘆いたりなどしない。なぜならその人間への復讐を楽しみにできるから。そして、退屈しのぎになるから。今日も競売にかけられる。さまざまな値打ちで。その最も安く買われた醜女は主人の家で豚のごとく喘いでいるのである___。


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