暗転すると幼女になった件

サン・セバスチャン

暗転からのチュートリアル?

 「いやぁ、相変わらずアリス氏の騎士は早いですなぁ」


 世紀末ルックのモヒカンのおじいちゃんがこちらに歩いてきながら話しかけてくる。VRMMOゲーム模範の騎士のフレンドだ。



「このゲーム長いですからねぇ」



 俺は幼い声を出しながら言う。アバターが幼女なので当然である。




「しかしまぁよくも極端に違うアバターを使いこなすものですな。私なら投げ出す自身がありますぞ」



「ネタに走ったツケですから、甘んじて受けましょう」




 このゲーム基本的に2つのキャラクターを操作する。チューターと呼ばれる今のキャラクターと、その教え子の騎士である。


 まぁ騎士は戦争や模擬戦、他のチューターとの試合以外では使わないのだが。このゲームの特徴として、自身(チューター)も育成しないといけない。魔物狩りや盗賊狩り等だ。




 必然的にフルダイブ式ゲームという事もあってこのチューターと騎士は背丈が似ている。自分の感覚で動くのだ当然である。そもそも自身と体格差が激しいアバターを作る事自体がハンデといっても良い。



 実際このメインキャラはチュートリアルだけで二月も体を慣らす必要があった。そのせいでVRMMOには俺の様な見た目のキャラクターは稀である。まぁ、世紀末ルックで攻めるフレのモッコスさんも大概だが。



「それでは私は仕事がこの後あるんで落ちますね」



「はい、また模擬戦やりましょう」




 俺も落ちるかな・・・




 ブツーンと音が鳴り暗転する。体の感覚が無い・・・待て待て強制終了したとしても安全装置ですぐ目が覚めるはずだ。何故?




 と思ったのも束の間すぐにゲームに戻った。だが、少しおかしい。チュートリアルの場所にいる。チューター育成所だ。さっきの強制終了のような動作のせいか?



周囲を見渡すと授業中のようだ。懐かしい、とキョロキョロしていると。



「どうかしたかねアリス君。それともこの授業は君には退屈かね?」



 神経質そうな教師が言ってくる。こんなイベントあったか?



「実に有意義な授業ですとも先生」



とりあえず無難に返事をしておこう。このゲームのNPCはAIを積んでいる。周囲の評価は行動が直に響くのがここ数年のゲームのトレンドでもある。




「それなら良い、もう少し落ち着いて授業は受けるように」



 どの言葉と同時に鐘の音が聞こえた。 



「きりも良い。授業はここまでとする。先ほど出した課題を済ますように」



 そういい残すと先生は部屋から出て行った。同時に生徒達の声で賑やかになる。



「アリス、アンタどうしたのよ?ケネ先生に目を付けられると面倒よ」と背中を叩かれた。



 痛い・・・痛い?おかしい、このゲームに感覚はあれど痛覚と呼ばれるレベルの物は無いはずだ。いくらリアル路線のゲームでも痛覚なんか積んでたら客は嫌がるだからこそ無いはずなのに。




 いい加減ログアウトして・・・出来ない。不具合か?これはかなりの問題になるぞ? とりあえずフレンドにコールして・・・フレンドリストが無い?更には運営へのコールも出来ない。




 非常に嫌な予感がする。

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