第17話 黄の賢者

 扉の向こうは広い部屋だった。巣の中は暗かったのだが、この部屋は明るい。

 明るい場所で暗視眼を使用すると、見えなくなるので解除した。


 光源は部屋のど真ん中にあった。明るい光を放つ球がふわふわと宙に浮いている。


 俺達は部屋の中に足を踏み入れる。


「誰ですか?」


 少し高めの声が聞こえてきた。

 声がしたあとカツカツと音が近づいてくる。


 足音がする方向を見据えると、誰かが近づいてくる。金色の長い髪。胸が大きいので性別は女。顔(ry。背中からドラゴンの翼が生えている。人化したドラゴンか、もしくはドラゴンハーフか。かなり高価そうな杖を右手に持っている。たぶんこいつが黄の賢者だろうな。


「お前は黄の賢者か?」


 とりあえず尋ねてみる事にした。


「……そうです。私は黄の賢者バラシア・サーナルドです。あなた方は人間ですね」


「そうだ。聞きたいことがあってことに来たのだが」


「あなたとお話しする事はありません。お帰りください」


 いきなりそう言われた。やけに手厳しいな。


「どうしても聞きたいんだが」


「もう1度口を開けば消えてもらいます。私は人間が嫌いです。世の中にあるもの全てのなかで一番嫌いです。人間がこの部屋にいるだけで虫唾が走ります。ドラゴン達を殺さずにここに来たようなので、少し猶予を与えましたが次はありません」


 人間が嫌いなのか。ドラゴンハーフなのに変な奴だな。こいつも半分人間なのにな。


 まあ、ハーフっていじめられるらしいからな。それでか? いやでも、それならドラゴンもハーフいじめるしな。理由はよく分からんな。


 でも、人間嫌いなら、魔法でドラゴンの姿に変身して行けばよかった。てか、そうすれば簡単に入れたし。

 何で思いつかなったんだ。


 後悔しても仕方ない。


 言わないというのなら強引に聞き出すまでだ。


「とにかく帰るわけにはいかな……」


 俺がそこまで言った時、バラシアが杖を振る。その瞬間、杖から轟音と共に雷撃が迸り、俺に直撃した。


「警告はしましたので、ほかの者たちも出ないようでしたら、彼と同じような命運を……」


「あのなー。話くらい聞いてくれてもいいんじゃないか?」


「!?」


 俺が声を出したら、バラシアは目を剥いてこちらを見てきた。かなり驚いている様子だ。


「雷撃耐性でもありましたか……?」


「雷撃だろうと何だろうと困った事に効かないんだ。不老不死になってしまっているんでね」


「戯言を」


 本当なんだけどなー。だいたい最初は皆、信じてくれないよな。


 とりあえず、一度捕まえよう。

 俺は魔法を使う。ちなみに魔法には杖を使う場合と使わない場合がある。杖を使えば魔法の威力が高まる。俺は杖を使わずに魔法を使ってもそれなりに威力が出せるので、杖は持たない。


「魔力吸収(マナドレイン)」


 手のひらをバラシアのほうに向けて魔法を発動。光の線がバラシアに向かって飛んで行く。

 かなり速度なので、バラシアは避けきれない。


「魔力吸収(マナドレイン)……ですか……? なっ!? い一瞬で魔力が!?」


 魔力吸収(マナドレイン)は文字通り魔力を吸収する魔法だ。本来はそこまで魔力を吸収できないので、あまり強い魔法ではないのだが、俺が使えばほぼ一瞬で魔力を枯渇寸前まで、吸い取る事が出来る。

 さすが賢者と呼ばれるだけあって、5秒ほど吸っても、まだ魔力があるようだが、それもほぼ尽きかけている。

 完全に吸収してはいけないので、ある程度で吸収をやめた。


「く……はぁはぁ……」


 バラシアは座り込む。魔力は力の源のようなもので、切れると行動が困難になる。


 さて、これで、もはや動く事も出来ないだろうが、どうしようか。

 拷問して口を割らせる? いきなり拷問するのはいい手には思えない。拷問は効かない奴がいる。バラシアがそうだった場合、拷問をした時点で、もう二度と聞き出せなくなる。


 しかし、普通に聞いても人間は嫌いだというし答えてはくれないだろう。どう説得するか……悩むな。

 他人の心の機微なんてもはや分からなくなってしまっているしなー。


 あ、そうだ。


 俺はいい案を思いついた。俺はミナ、アイシャ、レミに向かって、


「お前らせっかく付いてきたんだから、説得してくれないか?」


 そう頼んだ。





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