第2話 邪術組織
ドラゴンは最高で高度6000mを飛ぶという。ちなみに俺が飛び乗った時はたまたま低い高度を飛んでいたみたいで、そこまでジャンプしたというわけではない。
低い位置を飛んでいる時に飛び乗り、そこからドラゴンが高度を上げた。俺が飛び降りた時の高度は分からない。ただ、飛び降りる時、地面は見えていなかった。あと、こんだけごちゃごちゃ考えても地面につかないくらいには高かったらしい。
落ちている体勢は頭からだ。自殺のために落ちているんだから当然頭から落ちている。
それから落ち続け、数秒後、地面まで到達する。
ズドーーンと凄まじい落下の衝撃音が鳴り響いた。
……まあ、死なないわな。
普通なら木っ端微塵になってそうだが、完全に無傷。痛くもかゆくもない。
というか、今回は不老不死あんまり関係なかったかもしれない。
普通に耐えた。あの程度の高さから落ちても俺の防御力で全て防いでしまったっぽい。
不老不死だからここまで硬くなったので、無関係ではないけどな。
しかし、ここまで防御力が高いと呪いを解いても簡単に死ねんかも知れんな。なぜ俺は無駄に自分を強化したんだか。魔王をぶっ殺してみようと思い立って、強くなるよう修行したんだったな。放っとけばよかったのに魔王なんて。倒しても別にあんま楽しくなかったし。
俺は起き上がって周囲を確認する。
ん? 何かいる。
人間だ。俺以外の人間がいる。久しぶりに見た。
3人いる。どれも唖然とした表情で俺を見ている。
性別は……女が2人男が1人か? 自信がもてない。ある時期を境に人間の顔がまったく同じ顔に見えるようになり、区別をつけ辛くなっている。
胸のある奴が女でない奴が男と判別している。2人はあって、1人はない。
ない1人は髪が長くて少し華奢な体をしているが、胸がないのでたぶん男だろう。そうに違いない。
「ちょ……ちょっとあのー?」
やっとの思いでという感じで人間は声を出した。
「い、今、落ちてきたよね? だ、大丈夫なのかな?」
そう尋ねてきたのは、3人の中で唯一、男の人間だ。黒髪で長い髪。顔は目が2つあって鼻が真ん中にあって、口がその下にあるといった顔だ。ローブを着ており杖を持っている。たぶん魔法使いだろう。
幸い聞き取れる言葉を喋っている。世界にあるだいたいの言語は把握しているが、長いあいだ家にこもって久しぶり外に出たら、今まで聞いたことのない言葉で喋っていたというケースが過去にあった。
「残念なことに平気だ」
「ざ、残念?」
「ね、ねぇ? おかしくないこいつ。人間なの? 魔物じゃないの?」
男の横に居た女が怯えたようすでそう言った。胸の大きな人間で髪はピンクのショートカット。顔は目が2つあって鼻が真ん中にあって、口がその下にあるといった顔だ。
鎧を装備しており剣を持っているため、たぶん戦士だろう。
「失敬な。俺は人間だぞ……いや? 人間と言っていいのか俺は? 魔物になろうと思えばなれるし……いや、人間だろ。人間なはずだ」
「な、何かわけのわからないことをブツブツと呟いてるわ」
「こ、怖いよぉ……」
自分という存在が何なのか分からなくなってきた。人間だよな?
まあ、何でもいいか。死ねれば人間だろうが魔物だろうがなんだっていい。
「なあ、近くに町があったりしないか? 行きたいんだが」
「ま、町だと!? 貴様町に行って何をするつもりだ」
険悪な表情でそう言ってきたのは、騎士のような格好の人間だ。こいつも胸があるから女だ。髪は金髪のポニーテール。顔は眼が2つあって鼻が真ん中にあって(以下略。
「仮に貴様が魔物なら町に行かせるわけにはいかん。ここで退治してくれる」
この騎士のような格好をした女がそう言った。彼女は正義感が強いようだ。
「……退治してくれる? それはつまり殺してくれるということか?」
「え? あ、ああそうだ」
「そうか! それなら望む所だ! さあ、俺を殺してくれ!」
「は、はぁ?」
騎士はきょとんしたような表情になる。
「なんだその表情は、先に退治すると言ったのはお前のほうだろう? なぜそのような表情をする?」
「いやいや! 貴様の態度がおかしいからだろ!?」
騎士の女はそう言ってくる。どういうことだ。殺してくれと言うのがそんなにおかしいことなのか。
「レ、レミちゃん。こ、こいつ明らかにおかしいよ」
「それはわかっているが……」
「放っておかない? 関わるとやばそうだわ……」
ひそひそと話しているつもりだろうが、聴覚のするどい俺には全て聞こえている。
「なんだ。殺してくれんのか……残念だな。せめて町の場所を教えてはくれんかね」
「あっち」
三人が一斉に同じ方角を指差した。
「ありがとう。助かった」
「うん。別にいいからー」
「早く行って」
俺は教えてもらった方向に向かって歩き出そうとすると、
「ほっ……行った」
「よかった。これで邪術組織『ゲルヘナード』の調査に行けるわ……」
俺が遠くまで行ったと思ったのか、そう話し出した。
邪術組織? それって何か呪いを解く鍵が見つかりそうだな。
そう思って俺は詳しい話を聞くことにした。
「詳しく話を聞かせてもらえんか?」
「「「うわっ!」」」
三人は同時に驚いて声を出した。いきなり目の前まで移動してびっくりさせてしまった。
「な、なななななんなの!?!?」
「ひぃ!」
びっくりしすぎているみたいだ。3人の中で唯一の男である魔法使いの男は、泣き出してしまっている。男なのに情けない。
「びっくりさせてしまってすまん。その邪術組織とやらについて教えて欲しいのだが」
何か呪いを解く鍵が見つかるかもしれないしな。
3人はどうする? どうする? って感じで目を見合わせている。
しばらくして、
「な、何故知りたい?」
騎士の女がそう尋ねてきた。
「呪いを解きたいから」
「呪い……? 邪術師に呪われたのか? ……わ、分かった教えてやろう」
騎士の女は邪術組織について話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます