第二章 阿修羅Ⅲ

 どれくらい人波に流されただろう、昴は揉みくちゃにされながら逃げ続けた。車を降りた場所から大分離れて周りの風景も変わった。ずっと並んでいるかと思われた線路とも途中で別れ、道幅も狭くなり、人の流れもより激しさを増した。


  感じる……何かがこっちに向かっている。


  アシュラ、なの?


  夢の中のあいつに似た感じがする。


  やっぱり戻らなきゃ、このままじゃ本当にお父さんと二度と会えなくなる。


 昴は意を決し人波を押しのけ戻り始めた。思ったように進めず、怒鳴る声が耳元に聞こえたが、昴はそれを無視した。気ばかりが焦り、時間だけが過ぎていく。


 それでも昴は、人気のない細い道に何とかたどり着いた。この道を行くとかなり遠回りになるが、これ以上鮭の気分を味わうのはごめんだ。それに急がば回れという言葉はこんな時のためにあるのだろう、昴は慣れない道を父のもとへと駆けだした。


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