第九十七話 お嬢様動く!

 

 蒼い炎に包まれた巨大な竜がこちらに突っ込んできますわね、これちょっとヤバイんじゃないんですの?

 ワタクシは城の監視塔から空での戦いを見ておりましたが、なんかヤバイ事になっておりますわね。

 ちょっとちょっと本当に大丈夫なんでしょうね!


「一応これは備えたほうがいいですわね」


 ワタクシがそう言った瞬間にクドゥ・ヴァンに炎の鞭が絡みつき動きが一瞬止まります。

 そしてクドゥ・ヴァンの身体が耐えられなかったのか徐々に崩れていきますわね。


「サティさんの勝ちですわね」

「やってくれました!」


 ワタクシがそう呟き、マウナさんが小さくガッツポーズを決めます。

 しかし、それも束の間。


「勇者が発射されたとの報告!」


 ……は?


「勇者が発射された!? え? まさか本当に投石器で勇者を放り投げてるんですの?」

「そ、そのまさかです!」

「マジでアホですわー」


 そりゃあ、あの川を渡るならそれくらいはしないと行けませんが……それでも体張りすぎじゃないですの?


「勇者、川の前に陣を敷き始めてます」

「な! 不味いであります!」


 キノコ中尉が報告を聞いて叫んでおります。


「勇者は自分で橋の修理の防衛に着くつもりであります! 最大戦力を攻撃に出なく守りに使うつもりであります!」

「あー、なるほどねぇ。 そうすると攻撃要員がまだいるってことねぇ」


 橋を直してから攻める? それではこちらも体勢を立て直す時間が出来てしまいますわね。


「おそらく、クドゥ・ヴァンが運んだ中に工作員や強力な戦闘員がいるのでありましょう」

「そう考えるのが妥当ですわね」

「そうですね、兵士を送ってきたといっても千にも満たない数ですし」


 ワタクシとマウナさんはキノコ中尉の意見がさも当たり前のように思っておりますが、なにか引っかかる部分もありますわね。


「し、しかし相手の本陣に、せ、戦闘力が高いといえその数で、お、落とせると思ってるのでしょうか?」

「――ふっふっふ、マナカと魔王様がいる限り無理!」

「ナルリア殿の言う通り、無理でありましょうな。こちらには他にもセルカド殿やカーチス殿なる戦闘要員もおります。時間稼ぎと考えるべきでありましょうな」


 しかしそんな中でも何かに気づいたのかベティさんが声を上げます。


「あ! キノコ中尉は知らないから見落としていたけど。あいつら簡易ソースフェールの開発に成功してるじゃないのよ!」

「あ、そうでした」

「ソースフェールというのはチヨルカンが序盤に使っていた、魔物を封じておくカプセルでありますか? あれはマジックアイテムでそう数は用意できないと聞いておりましたが?」


 開発は成功しても大量生産にまでこぎつけていたということですの?


「開発は確かに成功していましたが、生産ラインの確保もできてるということですの?」

「わからないわよぉ、でもこんな無謀なことするには理由があるんじゃないかしら?」

「ふむ、あとは現地でも戦力補充できるネクロマンサーやモンスターテイマーの存在があるかもしれませんな」


 ベティさんの話に追い打ちかけるかのように、モルテさんも言葉を続けます。


「しかも、クドゥ・ヴァンをゾンビ化できる高位の術者が」

「なるほど、ならば街の防衛を強化するであります、ブライアン殿のケンタウロス隊を見回りとして、カーチス殿、セルカド殿のどちらかを城の守りに」

「あら、なら私が城の守りの指揮をとるわよ、守るのは専門なのよね」

「で、でしたら私も。城で、け、怪我人の手当てに当たります」


 ベティさんとアルティアさんは城で守りを。


「なら、俺たちオーガ隊はすぐに動けるように城で待機しておくぜ」

「なら私は城周辺の警戒にあたりましょう」


 カーチス隊は遊撃隊として、セルカド隊は城の外の守りへ。


「ブライアン殿は街の東側と南側を中心に警戒をお願いするであります、今までの攻め方を見ると西側の海からくる可能性は低く、北は王国が警戒してくれております」

「ケンタウロス隊了解です、南と東だけでいいのなら余裕でカバーできますよ」


 ケンタウロス隊は広範囲での見回り、エルフ隊は先の戦闘で数名しか動けないため城での防衛となりました。

 ならば、ワタクシがやることは一つですわね。


「ならばワタクシは大将首でも取りに行くとしますわ」

「「――え?」」


 皆さん、声を揃えて驚きます、ワタクシ何かおかしな発言しましたでしょうか?


「――流石、マナカ!凄い!」

「マナカの大将はそうでなくちゃな!」


 ナルリアちゃんと戦闘バカのカーチスだけが賛同しておりますわね。


「ゆ、勇者と一騎打ちするんですか?」


 マウナさんまでそこまで不思議ですの?


「当然ですわ! ワタクシ勇者だろうがなんだろうが負けるつもり有りませんわよ。星5とか知ったこっちゃねーですわ」


 日本人の起こした問題なら同じ日本人のワタクシがケリをつけますわよ!


「いや、マナカ殿の策はありかもしれません。ただし、マナカ殿が相手の大将と一騎打ちできる技量があるならの話でありますが」


 キノコ中尉はワタクシの実力を疑っておられるのかしら? あんなどうみても日本のオタデブにワタクシが後れを取ると? まあ、こういうのってスキル次第なんですけどね、ワタクシのスキルはとてもショボイですわよ!


「ご安心なさいな、ワタクシは割と優秀なんですのよ」

「そうです、マナカさんなら星4でも勝てます! スキルはアレゴミでしたけど」

「ぐ……」


 人に言われると泣けますわね……


「と、とにかく。皆さまは街を守り切ってくださいまし。ワタクシがきっとあのデブを倒してまいりますわ」

「しかし、必ず妨害はされるでありましょうな」


 簡単にはたどり着けませんわよねぇ。

 そう考えていると意外なとこから声が上がりました。


「でしたらー、シェンナとコリーちゃんがマナカ様の護衛につきますねー」

「お任せください、戦闘もこなせますので」

「では、コリー、シェンナ。マナカさんを無事勇者の元に届けてください」

「「了解しました」」


 こうして対勇者決戦小隊が組まれることになりましたわ。

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