第八十九話 続・岳暫迎撃戦
「中尉、目標を捕捉しました。予想通りのルートを進んでいます」
「了解であります、目標が甲地点に到着次第我々が先に仕掛けるであります」
「了解。では待機しているエルフ隊にも連絡しておきます」
どうやらガクザン隊は自分の予想通りに進軍をしているようであります。
そして一〇分ほどするとガクザン隊が姿を現したであります。
自分がゴーレムで合図を送りこちらも進軍、挟撃作戦開始であります。
「前方、敵影確認! 接敵します!」
「射程内に入り次第先制攻撃であります」
「了解!」
どうやら敵もこちらに気づいたようでありますな。
「敵もこちらに気づいたようです」
「良いタイミングでありますな、まずは挨拶代わりの一斉攻撃であります!」
「――まったくここは地獄だぜー」
ダークエルフ隊とナルリア殿が一斉に、ショートボウと呼ばれる小さめの弓での一斉射を開始したであります。
この武器の方が射程こそ短くなるが、森のような入り組んだ場所では小回りが利き使いやすいとのこと。
攻撃は功をなしたようでありますな、前列にいた数名が倒れ混乱しているようであります。
我々の攻撃を確認したエルフ隊も一斉射を開始、これですでに敵は三割ほどの被害を出したと思われます。
しかし、敵の立て直しも早いどうやら相手の指揮官であるガクザンはその辺りも優秀のようでありますな。
ですがこの場合、単純に優秀なほうが楽な相手と言えましょう。
「く、挟撃か! やはりこの辺りは敵のテリトリーだな。皆のもの体勢を立て直し南下せよ。開けた場所に湖があったはずだ、そこで迎撃する!」
ガクザンの声がこちらにも聞こえます、やはりガクザンは優秀でありますな。
一瞬でそこまで判断し決断し命令を下すのでありますからな。
しかし、なまじ優秀なのが裏目に出ているとは知りますまい。
「地の利はこちらにあり、追撃するでありますぞ!」
自分はわざとらしく大声を上げ、ガクザン隊を南に誘導します。
ただ困ったことに想像以上に敵の立て直しと進軍速度が速いところでありますな。
「あの多人数にしては移動が早いでありますな」
「――はやーい」
「中尉どうされます?」
「問題はありません、このまま追撃であります」
「了解」
敵も多少反撃してくるでありますが、逃げるので精いっぱいなのか大した反撃ではありませんな。
「時期に目的地です」
「ではエルフ隊と合流し、泉に敵が入ったら森に紛れて半包囲状態にするであります」
「了解です」
予定通りガクザン隊が泉のある開けた場所で大勢を立て直しているでありますな。
ですがここで完全に立て直されても困るので自分は攻撃命令を出します。
「全軍攻撃開始!」
弓による一斉射を再び行った後に、敵を逃がさないために突撃を開始するであります。
「うわあああ!」
「うぎゃー!」
立て直し途中だったところを襲撃され、さらに混乱する敵部隊。
作戦は思った以上に功をなし敵の半数を殲滅。
だが敵も黙ってやられるわけではないので、こちらに負傷者も出始めておりますな。
「くそ! これが異世界人なのか強い!」
「ぐあ!」
エルフ隊の一部が大きな音ともに吹き飛ばされます。
ガクザンが肩を突き出し体当たりのような恰好で止まっておりました。
「舐めるなよ! 亜人ども、我が
大陸の拳法の使い手のようでありますな。
八極拳のようなものでありましょうか? 自分はその辺りは詳しくないのですがガクザンがその道の手練れだということはわかります。
次に右足で地面を踏み右の拳を突くと、エルフの一人が約五メートルほど吹き飛ばされ木にたたきつけられそのまま気絶してしまいました。
「ガクザン相手は纏まって攻撃を! 相手は近接攻撃が得意な模様、決して近距離戦はしかけないように! ナルリア殿! ガクザンの相手をお願いするであります! こちらがある程度片付き次第援護に向かいます」
「――わかった! マナカとどっちが強いかな!」
ナルリア殿が敵兵士を切りつけたあと、一気に木に飛び乗り木をつたってガクザンのいる方に向かいました。
「さて、ガクザンが思った以上に強敵でありますので。出し惜しみは無しで行ったほうが賢いでありますな」
自分は兵士が比較的に多く集まってる場所に狙いを定め、味方の兵士に合図を送ります。
「了解!」
エルフとダークエルフの皆さんは口と鼻を抑えつつ、魔法で敵を足止めすると後ろに下がります。
「ではいきます!
ネムリ茸の胞子を受けてみよ! 効果が出るのに少し時間がかかるのが難点でありますが、集団戦においてこれは強力な技であります。
あ、あと強い風には弱いでありますけどね。
敵の兵士達の足元がふらつき始めたでありますな、自分は次の地点でも同じことをしてからガクザンの元へと向かいました。
ガクザンが戦ってる地点では味方のエルフ達が倒れており、ついには自軍にも死者が出始めておりました。
「ガクザンの戦闘力を見誤ったのは自分の失態でありますな……やはり味方が死んでいくのを見るのは何時までたっても慣れないものでありますな」
ガクザンの相手は自分と、この部隊で一番の戦闘力のナルリア殿で相手するほうが賢いでありますな。
敵方のガクザンも自分を囮に味方を先に進ませる戦法に変更しておりますな、すでに数名が森を進んでおります、仕方ありません。
「ガクザンは自分とナルリア殿で相手をします! 皆様はこれ以上、敵兵士がここから逃げぬよう追撃をお願いします! 味方負傷兵の治療もお願いします」
自分が叫ぶと動けるものはすぐに行動を開始しました。
叫んだ自分にガクザンは目を向けると、目を見開き驚いておりました。
「な、なんだお前は! ゴーレムの胸の部分にキノコだと?」
「――まあ、最初はみんなその反応!」
「自分でも珍妙だとは思っております!」
ガクザンはそれでも構えを取ると。
「面白い! 劉岳暫参る!」
「元大日本帝国海軍、現テル・ファーレ魔王国所属。米田義臣、貴官の相手を務めます」
さて、大見え切ったはよいでありますが……自分、作戦立案担当なんで勝てる自信はありませんな!
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