第八十七話 オカマvsイ 後編

 

 さあ、第二ラウンドの開始よ!


「アルティアちゃん、マナカちゃんならどう戦うと思う?」

「マ、マナカさんなら、し、正面から戦うんじゃないでしょうか?」

「そうよねぇ」


 ソンジンが立ち上がってきたわね。


「貴様……」


 ソンジンは再び構えを取った、相変わらず体がブレて見えるわねぇ。


「アルティアちゃん、ちょっと無茶な戦い方するけど回復お願いできるかしら?」

「わ、わかりました」


 さて、盾役だからできる戦い方をするとしましょう。

 良い子はまねしちゃだめよん、お姉さんとの約束ね。


 私は左腕につけていたバックラーを手に持ち変える。

 これは盾役だからできる、盾役としては失格の戦い方をする準備よ。


「さあ、かかってきなさい! 侵略異世界人! 現地人舐めるなよ!!」

「ほざけ! 魔物と共存を試みる人間の恥さらしが!」


 ソンジンの鋭い右のハイキックが私の顔に向けて放たれる! 私はその蹴りを顔で受け止めその足を右手で抑え込む。


「む!」


 ソンジンも捕まれるとは思ってなかったようね。


「いったー、しかし間合いが測り難いのなら食らった瞬間を狙えばいいのよ! タフな盾役だからできる芸当ね!」


 私は左手に持ったバックラーでソンジンの顔面を打ち抜く。


「うぎゃ!」


 ソンジンが悲鳴を上げる。

 二発食らわせ三発目を叩き込もうとしたところ、ソンジンが私の顔面に左足で打った、これには私もたまらずに足を放してしまった。


「く! ほんと、足癖悪いわね!」

「貴様もしぶとさはゴキブリ並みだな!」

「ちょっと! 寒気がする個体名を口に出さないでよ!」


 ソンジンは次は大振りな攻撃をせず、動作の少ない左のローキックで攻撃してきた。

 私は反撃は考えずローキックを躱そうとしたところ、反対の右側に痛みが走った。


「――っ! え?どういういことよ」

「くく、俺のギフトが間合いを測り難くするだけだと思ったか?」


 左のローキックだと思ったら右のローキック? そんな芸当できるなら最初からやってるわよねぇ。考えられるのはポンポンできない理由があるようねぇ。切り札と言ったところかしら?


「べ、ベティさん大丈夫ですか?」


 アルティアちゃんがスピード重視で下級の回復魔法をかけてくれる。痛みが引いていくだけでも助かるわね。


「ええい! 回復役がいるとは厄介な」


 アルティアちゃんとソンジンの間に移動しアルティアちゃんの安全を確保する。この子に倒れられたらソンジンに勝てる確率がぐっと下がっちゃうものねぇ。ま、それだけの理由じゃないわよー仲間はしっかり守らないとね。


「――ストーン・バレット!」

「しまった! 魔法!」


 そう言えばコイツ地属性の下位魔法を使ってたわね。


「アルティアちゃん!」


 私は後ろを確認する、アルティアちゃんは石弾を回避したところだった。


「だ、大丈夫です。自分にも強化魔法は、か、かけてあります」

「ふう、良かった……が!」


 アルティアちゃんを確認するため、後ろ向いたのはミスったわね。私は左の横腹に衝撃を受けて一メートルほど吹き飛ばされた。


 しかし、すかさず立ち上がりソンジンとの間合いを詰める


「今の不意打ちは効いたわねぇ……」

「戦闘中に余所見をするのがいかんのだ」

「まあ、不意打ちしないと私にダメージ通せないものねぇ」


 私は挑発する、おそらくだけどコイツ。


「なんだと!」


 すぐに反応し叫んだ。ジークンドー挑発した時も、マナカちゃんの方が強いって言った時も反応してたから思ったのだけども、どうやら煽り耐性が低いようねぇ。

 ソンジンは大振りなミドルキックを繰り出してきた、私はこれを右手でブロックすると足に肘を打ち下ろした。手応えありね、少し嫌な音がしたから足を痛めたと思うのよね。


「ぐおあ!」

「痛そうねぇ! さっきの切り札みたいなローキックはしないのかしら?」

「くそ! お望みなら食らわせてやる」


 ソンジンは左のローキックをまたも繰り出す、私は左を警戒し足元をよく見る。

 すると今度は正面から右のトーキックを食らっていた。


「いったー!」


 しかし、左足の影は一瞬動いただけね。

 どうやら体がブレて見えるのは一種の幻覚で、左のローキックはフェイントそれを幻覚で打ち抜いたように見せ、右のキックをブレさせ見えにくくし繰り出してるってところねぇ。

 おそらく、左のフェイントをするときに多くの魔力が必要なため連発できないと見るべきね。


「は、ははは。威勢の割には避けることも受けることもできないではないか!」

「そうねぇ、今度も食らってしまったわね。でも、貴方も随分息が荒いわよぉ?」


 アルティアちゃんの魔法での脇腹のダメージに、さっきのカウンターでの足のダメージで随分と攻撃が鈍くなってきてるわね。

 こうなると支援のいる私が有利ね。そろそろトドメと行きましょう。


「その技じゃないと私には攻撃が通らないわよ! さあどんどんきなさいな」

「後悔しろ!」


 ソンジンは今度は右のミドルで仕掛けてきた、しかしその技はほぼ見切ってるのよね。

 しかも私の挑発でソンジンのヤツは必ず、のそ技で来るときたものだ。


「ちょーっと、挑発に乗りすぎね。プライド高すぎじゃない?」

「うるさい!」


 繰り出す蹴りは違っても素直に同じ技ねぇ。

 私はそのまま右のミドルキックを無視し、本来ある右足の膝にバックラーを叩き込む。

 バキっと嫌な音がしてソンジンがのたうち回る。


「うぎゃあああ! 右足が!! 何故だ何故右足が軸だと分かった?」

「貴方ねぇ自分の技の弱点ぐらい知っておきなさいよ」

「弱点だと!」

「戦闘が終わったら教えてあげるわよ!」


 私は腰に戻したメイスを右手に取りソンジンを殴り飛ばす。こいつは効いたでしょうね。

 足をやられて踏ん張りがきかなくなってたソンジンが吹き飛ぶ。

 それでも立ち上がろうとしたところ、トドメのお姉さんタックルオカマタックルをぶちかます。

 私のタックルはマナカちゃん曰く、軽トラに撥ねられたような威力と言っていたわねぇ。


 再度吹き飛ぶソンジンはそのまま立ち上がることはないようね。

 私はソンジンが生きてるのを確認すると特別製の縄で縛りあげた。


「や、やりましたね! べ、ベティさん」

「ふう、これで相手の勢いが少しでも緩くなればいいわね」


 セルカドちゃんが私たちの方にやってきた。


「なんと、ベティ殿流石ですな。敵の指揮官を倒すとは」

「相当骨が折れる相手だったわよー、申し訳ないけど少し休ませてもらうわね」

「でしたら、その男の搬送は我々が受け持ちましょう」

「ええ、お願いするわね」


 私はアルティアちゃんと一度陣の敷いてある地点に戻ることにしたわ。


「さて、この戦はまだまだ序盤ねぇ」


 敵はまだ沢山いるわねぇ……でも私は少し休ませてもらうとしましょう。

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